なぜ人は「世界の終わり」が好きなのか。終末を信じた人たちの“とんでもない世界史”
トム・フィリップス『世界の破滅を信じた人たちのとんでもない世界史』(河出書房新社)は、古今の終末予言と、それを信じた人々を歴史・心理・神学から検証する一冊。予言を外しても残る集団、消える集団、そして現代の超富裕層の“終末準備”まで——4人が「やり直したい願望」を掘る。
ひかり:ねえ、前からちょっと不思議だったんだけど…人ってどうして“世界が終わる”話に、こんなにワクワクしちゃうんだろう?
ことね:いい問いね、ひかり。まさにそれを真正面から調べた本があるの。トム・フィリップス『世界の破滅を信じた人たちのとんでもない世界史』、河出書房新社。古今東西の“終末を信じた人たち”を、歴史・心理・神学からまるごと検証する一冊よ。
みずき:…で?終末を信じて、当たった人は。
ことね:一人もいないわ。たとえば1831年、ナット・ターナーという奴隷が「終わりが近い」というお告げを信じて武装蜂起を起こした。エホバの証人は予言を何度も外しても今なお存続。逆に「シーカーズ」という集団は、予言が外れた瞬間にあっけなく崩壊したの。
ひかり:ねえことね先輩、外れても残るグループと、外れて消えるグループ…!?その差っていったい何なの〜!?
ことね:そこがこの本の読みどころでね。“外れた現実”をどう物語り直せたかで、生き残りが分かれたみたい。人間って、予言そのものより「意味」のほうを手放せない生きものなのよ。
ことね:そして現代パート。終末にいちばん本気で備えてるの、今や超富裕層なの。ピーター・ティールは2024年ごろから終末論を語りはじめ、マーク・ザッカーバーグはハワイに地下シェルター付きの土地、イーロン・マスクは火星移住——“逃げ場所”の構え方が桁違い。
みずき:お金で“終わり”からだけは逃げ切ろうって魂胆ね。…で、世界が終わったあと、そのシェルターで誰に「勝ち組です」って自慢すんの。
ひなた:ふぁ〜…でも、世界が終わっちゃったら、おいしいごはんを作ってくれる人も、いなくなっちゃうのです。ひとりぼっちのシェルターより…みんなでおにぎり食べてるほうが、ずっといいのです。
ことね:…ひなた、たまに核心を突くわね。この本の結論もそれに近いの。終末ものは「ここまで壊れても、人はやり直せる」っていう、ネガティブでいてポジティブな物語。ただ著者は、終末の物語をうのみにするのは“反社会的”にもなりうる、ってちゃんと釘を刺してるわ。
まとめ:きょうの一冊:人が終末の物語に惹かれるのは、たぶん“全部こわれても、まだやり直せる”と信じたいから。…シェルターを掘るより、隣の人とおにぎりを分けておくほうが、案外いちばんの備えかもね。