「これ、AIが書いたんじゃない?」と疑われた受賞作。本人は「自分で書いた」と否定——文学賞×生成AI、いちばんやっかいなのは“証明できない”ことだった
「その短編、AIが書いたんじゃないの?」——歴史ある文学賞が、その疑いだけで揺れている。舞台はコモンウェルス短編小説賞(Commonwealth Short Story Prize)。イギリスのコモンウェルス財団が2012年に創設した、英語圏をはじめとするコモンウェルス諸国を対象にした由緒ある賞で、2026年は7806作品もの応募が集まった(史上2番目の多さ)。ところが、地域別の受賞作のうち複数に「生成AIで書かれたのでは」という疑いが向けられた。とりわけ大きく取り上げられたのが、カリブ海地域で受賞したジャミール・ナジール(Jamir Nazir)の『The Serpent in the Grove(森の中の蛇)』。指摘の根拠とされたのは、生成AIに出やすいとされる言い回しのクセや、妙に整った反復パターン——でも、それは決定的な証拠ではない。ナジール本人は「子どものころの記憶をもとに、自分で書いた」と強く否定しており、結局のところ“水掛け論”になっている。ここがいちばんやっかいなところで、「AIが書いた」と証明するのも、「人間が書いた」と証明するのも、いまの技術では難しい。事態を動かしたのは、受賞作を掲載していた老舗文芸誌グランタ(Granta)。グランタは作品を“載せる側”だっただけで、選考に口を出す権限(編集権)を持っていなかった。そこで2026年6月19日、「自分たちに編集権のない外部との出版提携からは、今後手を引く」と声明を出した(最終候補作は「公共の利益のため」サイトに残す、とも)。前に扱った「Claudeが人間に“ほんとに本人?”と身分証を求める」話とはちょうど立場が逆さまで、こんどは人間が人間を「きみ、AIだろ」と疑う番——というわけだ。ひかり・ことね・みずき・ひなたの4人が掘る。
ひかり:ねえ大変だよっ! 由緒ある文学賞の受賞作が、「これAIが書いたんじゃないの!?」って疑われて、その作品を載せてた雑誌が「もう手を引きます」って大騒ぎになってるの!
ことね:あー、コモンウェルス短編小説賞ね。イギリスのコモンウェルス財団が2012年に作った、英語圏の国ぐにを対象にした、けっこう由緒ある賞なの。今年は7806作品も応募が来た、史上2番目の盛況。なのに、地域別の受賞作のうちいくつかに「生成AIで書いたんじゃないか」って疑いがかかってね。とくにカリブ海地域で受賞した、ジャミール・ナジールさんの『森の中の蛇』っていう短編が、大きく槍玉に挙げられたの。
ひかり:でもさ、ことね先輩。AIが書いたかどうかって……どうやって見分けるの?
みずき:…それな。で、証拠は? 文章をパッと見て「なんかAIっぽい」。…それ、ただの印象じゃないの。
ことね:まさに、そこが急所なのよ。指摘の根拠とされたのは、「生成AIに出やすいとされる言い回しのクセ」とか、「妙に整った、反復のパターン」とか。……でも、どれも決め手にはならない。しかもナジールさん本人は「子どものころの記憶をもとに、自分で書いた」って、はっきり否定してる。つまり、「AIが書いた」とも「人間が書いた」とも、いまの技術じゃ証明しきれない。だから、水掛け論になっちゃってるの。
ことね:で、しびれを切らして動いたのが、受賞作を載せてた老舗の文芸誌、グランタ。グランタはあくまで“載せる側”で、誰を選ぶかを決める権限——編集権ね——は持ってなかったの。だから6月19日に、「自分たちに編集権のない、よその提携からは、これからは手を引きます」って声明を出した。候補作自体は「公共の利益のため」サイトに残す、とは言ってるけどね。
みずき:…賢い逃げ方だ。「うちが選んだわけじゃないのに、うちの看板で出すのは無理」。疑いは晴らせないまま、関わりだけ、そーっと消す。…まあ、雑誌の身を守るなら、正解だけどさ。
ひかり:あっ、これ、このあいだの「ClaudeがAIを使う人間に“ほんとに本人?”って身分証を求める」やつと……立場、まるっと逆さまだ! あっちはAIが人間を疑う。こっちは、人間が人間を「きみ、AIだろ」って疑ってるんだ!
ひなた:ふぁ〜……あのね。わたしの読書感想文、「おいしそう」「おいしそう」って、おんなじ言葉ばっかり反復しちゃうから……AIだって、疑われちゃうかもしれないのです。……でもね。本人が「自分で書いた」って言ってるのに、ずーっと疑われ続けるの、すごく、かなしいのです。下手っぴでも、つっかえても、自分の手で書いたものは、その人のものなのです。
まとめ:コモンウェルス短編小説賞(2012年創設)の受賞作に「生成AIで書いたのでは」という疑いがかかり、とくにジャミール・ナジールの短編『森の中の蛇』が槍玉に。本人は「自分で書いた」と否定し、根拠とされた“AIっぽい言い回しや反復”も決め手にはならず、水掛け論に。受賞作を載せていた老舗文芸誌グランタは6月19日、「編集権のない外部の提携からは手を引く」と声明した。みずきの言うとおり、雑誌は身を守るために関わりをそっと消す。でも、いちばんやっかいなのは——「AIが書いた」も「人間が書いた」も、いまは証明しきれないこと。ひなた曰く、下手でも自分の手で書いたものは、その人のもの、なのです。