「ぼくの昔の仕事、もしかして“詐欺の数合わせ”で存在してた?」——10年後に元上司がSECに訴えられて、あるエンジニアが立てた問い
「あのころの自分の仕事は、もしかして“詐欺”のために存在してたんじゃないか?」——あるソフトウェアエンジニアが、10年越しに立てた問いが、いまHacker Newsで静かに刺さっている。書いたのは、イギリス発のスタートアップ「GenieDB」でエンジニアをしていた人物。会社がアメリカのベンチャー投資会社「Frost VP」に買収され、本人もアメリカへ渡った。ところが約10年後、Frost VPのオーナーであるスチュアート・フロスト(Stuart Frost)が、アメリカのSEC(証券取引委員会=証券市場の番人)に詐欺で提訴されていることを知る(※あくまで提訴段階で、有罪が確定したわけではない)。SEC側の主張によれば、Frost VPは投資家から集めたお金を、いくつもの会社(Jointly/Maana/Osprey/SegOne、そしてGenieDB)にばらまいて投資し、そのたびに相場より過大な「インキュベーター手数料(=スタートアップのお世話代)」を抜いていた、という構図。つまり“投資先を増やすほど手数料がチャリンと入る”仕組みだ。筆者がいちばん打ちのめされたのは、2014年5月の社内メール。そこには「経費を賄うには、あと2社いる(GenieDBが6月に出てくる)」という趣旨の文面があった——つまり自分のいた会社は、足りない経費の“数合わせ”として調達された一社だったのかもしれない、というのだ。それでも筆者は、最後にこう結ぶ。会社の“お財布の事情”がどうあれ、GenieDBの技術そのものは本物で、自分たちは真剣に、いいものを作ろうとしていた、と。ひかり・ことね・みずき・ひなたの4人が掘る。
ひかり:ねえ……ちょっと切ない記事を見つけちゃったの。あるエンジニアの人が、昔の自分の仕事をふり返って、「あれってもしかして、“詐欺”のために存在してた仕事だったのかも」って、書いてるんだ……。
ことね:その人ね、GenieDBっていうイギリス発のスタートアップでエンジニアをしてたの。で、会社がアメリカの投資会社「Frost VP」に買収されて、本人も海を渡った。ところが10年くらい経って——そのFrost VPのオーナー、スチュアート・フロストっていう人が、アメリカのSEC……証券市場の番人ね、そこに「詐欺だ」って訴えられてるのを知るのよ。……あ、先に言っておくと、これは“提訴”の段階。まだ有罪が確定したわけじゃない、っていうのは正確にね。
ひかり:えっ、詐欺!? でも、その人はちゃんと働いてたエンジニアでしょ? なんで“自分の仕事”まで疑うことになっちゃうの!?
ことね:SEC側の言い分だとね、Frost VPは投資家から預かったお金を、いくつもの会社にばらまいて投資して、そのたびに「インキュベーター手数料」——スタートアップのお世話代ね——を、相場よりずっと多く抜いてた、と。つまり……投資先の会社を増やせば増やすほど、手数料がチャリンチャリン入る仕組み、だったというわけ。
みずき:…あー。じゃあその会社、ほんとは会社を“育てたい”んじゃなくて、“数を増やしたい”だけ。会社は、手数料を抜くための口実。…で、それ、誰が得して、誰が損したわけ?
ことね:損したのは、お金を預けた投資家。得したのは、手数料を抜く側。……で、筆者がいちばん打ちのめされたのが、2014年5月の社内メールなの。そこに「経費を賄うには、あと2社いる」「GenieDBが6月に出てくる」って趣旨の文面があった。足りない経費のために、新しい投資先を“調達”してた、って読めちゃう一文ね。
みずき:…で、その「あと2社」の数合わせの一個が、この人のいた会社だったかも、ってことか。自分の机も、毎月のお給料も、ぜんぶ「手数料を抜くための口実」だったかもしれない。……うわ。それ、いちばん効くやつだ。
ひかり:なんか……自分がやってきたこと、ぜんぶ意味なかったみたいで、つらいね……。
ことね:でもね、ひかり。その人、最後にちゃんと、こう書いてるの。会社の“お財布の事情”がどうあれ、GenieDBの技術そのものは本物だったし、自分たちは真剣に、いいものを作ろうとしてた——って。そこは、誰にも奪えなかったのよ。
ひなた:ふぁ〜……あのね。だれかが、わるいことのために、わたしを“数”のひとつに使ってたとしても……わたしが心をこめて焼いたクッキーは、ちゃんと、おいしいのです。作らせた理由が、ずるいものでも、できあがったものが本物なら、それはもう、ぜんぶ本物なのです。だから、その人の作ったものも、本物なのです。
まとめ:あるエンジニアが10年越しに立てた問い——「ぼくの昔の仕事は、詐欺の“数合わせ”で存在してただけ?」。勤め先GenieDBを買収した投資会社Frost VPのオーナーがSECに詐欺で提訴され(※提訴段階で有罪確定ではない)、SECの主張では“投資先を増やすほど過大な手数料が入る”構図。2014年の社内メールには「経費のためにあと2社いる」の一文が。みずきの言うとおり、損したのは投資家で、得したのは手数料を抜く側。それでも筆者は「技術は本物だったし、真剣に作っていた」と結ぶ。ひなた曰く、作らせた理由がずるくても、心をこめて焼いたクッキーがおいしいなら、それはもう本物なのです。