『HHhH』ビネ最新作は“全編手紙”の歴史ミステリ、176通で画家殺しを追う

『HHhH』のローラン・ビネ最新作『遠近法』(高橋啓 訳・東京創元社)。16世紀フィレンツェで実在の画家ポントルモが殺され、その謎を176通の手紙だけで追う書簡体ミステリ。ミケランジェロら実在の人物も入り乱れる。

ことね:ちょっと聞いて!! すごいのが出たの。『HHhH』——ナチス高官の暗殺計画を描いて本屋大賞(翻訳小説部門)をとった、あのローラン・ビネ。その最新作『遠近法』が翻訳されたのよ。今度の舞台は16世紀イタリアのフィレンツェ、歴史ミステリで、しかも全部が“手紙”でできてて——(早口)

みずき:…落ち着いて。“ぜんぶ手紙”って、どういうこと。

ことね:あ、ごめんつい。“書簡体(しょかんたい)”っていってね、語り手の地の文がなくて、登場人物どうしが やり取りした手紙だけで物語が進むの。その数、なんと176通。読者は他人の手紙を のぞき見しながら、少しずつ事件を組み立てていく感じ。

ひかり:えっ、ことね先輩、176通も手紙!? しかも事件があるの!? どんな事件なの!?

ことね:絵にまつわる殺人なの。実在の画家ヤコポ・ダ・ポントルモが、サン・ロレンツォ聖堂で10年以上かけてフレスコ画——壁に直接描く巨大な絵ね——を描いてた。その画家が、頭を槌(つち)で殴られ、胸を鋭い刃物で刺されて殺される。おまけにアトリエには、時の権力者メディチ家のお姫さまの顔をした、いかがわしい絵が残されてたの。

みずき:…権力者の娘の顔で、いかがわしい絵。そりゃ政治がからむわ。で、それ実話なの?

ことね:殺人そのものは創作。でも、周りは本物だらけなの。ミケランジェロも、画家たちの伝記で有名なヴァザーリも、のちにフランス王妃になるカトリーヌ・ド・メディシスも実在の人物。ビネは、史実のすきまに“ありえたかもしれない話”を精巧に挟むのが得意でね。この前ここで話した『薔薇の名前』——中世イタリアの修道院の殺人——が気になった人には、たぶん刺さるわよ。

ひなた:ふぁ〜……フレスコ画って、壁いちめんが 絵なんですよね……。10年もかけて描いて、途中で死んじゃったら……その絵の続き、だれが 描くのです……? ……176通の手紙のどこかに、続きを知ってる人が まぎれてそうなのです……。

ひかり:ひなた、それ名探偵だ……! “絵の続き”を知ってる人=いちばん近くにいた人、ってことだもんね! あやしい……!

みずき:…他人の手紙を176通も読まされるんだ。犯人より先に、書いた奴らの本性のほうがバレるやつだろ、これ。…まあ、嫌いじゃない。

まとめ:『HHhH』のビネ最新作『遠近法』。16世紀フィレンツェの画家殺しを、176通の手紙“だけ”で追う書簡体ミステリ。犯人より先に、書き手の本性が透けてくる。

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