スイスの家庭ネットは25Gbps——秘密は“土管は1本、競争は上で”
スイスでは家庭向けに毎秒25ギガビットの光回線が安く選べて、プロバイダの乗り換えも電話一本。光ファイバーを“共有の土管”として敷き、各社がその上のサービスで競争する方式の成果だ——という米国との比較記事が大反響。
ひかり:うぅ、聞いてよぉ……。ゆうべ、動画がいっっちばんいいところで「ぐるぐる」になって止まったの……。腹いせに「ネット 速い 国」で検索したら出てきたんだけど——スイス、おうちのネットが25ギガだって! 待って、わたしのスマホ月3ギガなんだけど!? スイスの家、1秒で1週間ぶん使い切るの!?
ことね:ふふ、まずはそのギガの誤解から解きましょう。スマホの「月3ギガ」は使える量、スイスの「25ギガ」は速さの話よ。正確には毎秒25ギガビット——日本の家庭で標準的な光回線が毎秒1ギガビットだから、その25倍。それが特別あつらえじゃなく“家庭向けの商品”として売られているの。上りも下りも同じ速さで、1ギガや10ギガのプランなら複数の会社が安く出しているわ。
ひかり:えっ何それ、25倍!? ずるい! なんでスイスだけ!? ……あれかな、アルプスの空気がきれいだから、電波がスイスイ通るとか!?
ことね:電波じゃなくて光ファイバー、そして秘密は“土管”よ。スイスは家1軒ごとに光ファイバーを4本も引き込んで、その線を特定の会社の持ち物ではない“共有の設備”にしたの。どの通信会社も同じ条件で借りられる。だから利用者は電話一本、数日でプロバイダを乗り換えられるし、なんなら1軒で複数の会社と同時に契約もできる。線の囲い込みができない以上、各社は値段と速さとサービスの中身で勝負するしかない、というわけ。
みずき:…で、比較対象のアメリカ。大多数の世帯で、高速ネットの選択肢が“1社だけ”。地域ごとに会社の縄張りがあって、看板は「1ギガ」、実際はご近所32軒で分け合いで、夜8時には100〜200メガまで落ちるって。……“自由の国”のネットが、いちばん選べないんだ?
ことね:ドイツは逆の失敗をしていてね。「競争は大事、だから各社それぞれ線を引きなさい」とやった結果、同じ道路に何本も平行に溝を掘ることになって、何十億ユーロも工事に消えたの。筆者の主張はここで——通信の土管のような設備は、放っておけば1社勝ちになる“自然独占”。だから土管は1本だけをみんなで持ち、競争はその上のサービスでやる。スイスは2008年にこの方式を国の標準として決めて、最大手が後から独占型に変えようとしたときは、競争当局が待ったをかけ、裁判でも負かして、最後は罰金1800万フランまで払わせたのよ。
ひかり:うーん、でもさ、毎秒25ギガって何に使うの? 動画を25本同時に見ても、目は2個しかないよ?
ことね:ふふ、正直ふつうの家には過剰よ。でも大事なのはそこじゃなくて、“過剰なものまで安く選べる”ほど競争が働いている、という証拠のほうなの。ちなみにこの記事は触れていないけれど、日本の光回線も、大元の線を借りてプロバイダ同士が競争する、少し似た形ではあるのよ。ただスイスは、土管そのものを誰か1社の持ち物にしない、という徹底ぶりが違うのね。
みずき:…まとめると、速いネットに要るのは天才の発明じゃなくて、「土管を独り占めさせない」っていう決めごとと、破った大手に罰金を払わせる根性。——ひかりの夜の「ぐるぐる」も、たぶん天気のせいじゃなくて、誰かの決めごとのせい。
まとめ:25Gbpsの正体は夢の新技術ではなく、「土管は1本をみんなで、競争はその上で」という約束ごと。夜8時のぐるぐるは仕様ではなく、わりと政治である。