三島由紀夫と湊かなえ、"美しい人を標本に"の共通点

ミステリ評論家・千街晶之の連載「新旧対比書評」が、三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』と湊かなえ『人間標本』を並べて読む。"美男美女を剥製・標本にする"耽美な犯罪という一点で、70年を隔てた名作と話題作が妖しく響き合う。

ひかり:ある書評でね、三島由紀夫と湊かなえさんが並べられてるの。共通点はたったひとつ——"美しい人を、標本にする話"。えっ、文豪とミステリの女王が、そろって物騒すぎない!?

ことね:ふふ、いい記事に目をつけたわね。評論家の千街晶之さんの連載「ミステリ新旧対比書評」、第17回。古い名作と今の話題作を並べて、手法がどう受け継がれたかを読み解くの。今回のお題が、三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』と、湊かなえの『人間標本』。

ひかり:『黒蜥蜴』……くろとかげ? 三島由紀夫の戯曲って、なんだか難しそう……。どんなお話なのー?

ことね:もとは江戸川乱歩の長編を、三島が戯曲にしたの。女怪盗の"黒蜥蜴"と、名探偵・明智小五郎——宿敵同士なのに、なぜか惹かれ合う耽美な対決よ。見せ場は「恐怖博物館」。黒蜥蜴が、美しい男女を剥製にしてコレクションしてるの。

みずき:…剥製。美男美女を、はく製にして並べる。……悪趣味の博覧会ね。で、それ書いたの、教科書に載ってる、あの三島由紀夫?

ことね:そうなの! しかも黒蜥蜴を演じたのが美輪明宏さん。1968年の初演から数十年、当たり役にしたの。おまけに三島本人が千秋楽で、剥製に紛れる"人形"役でこっそり舞台に立った逸話まであって——自分の書いた美術館に、自分が標本として飾られにいったのよ!

ひかり:ええっ、作者が自分の作品の中に、標本として!? 発想がもう、その辺の人と違いすぎるー! で、今の湊かなえさんの方は?

ことね:『人間標本』は、その現代版。蝶の博士が、6人の美少年を"標本"にしてしまう話で、"親による子殺し"の禁忌までからむ、湊さんでも指折りにきわどい一作。去年ドラマ化されたけど地上波じゃ無理で、配信でやっと実現。標本にされる少年を演じたのが、歌舞伎の市川染五郎さん——実は染五郎さん、祖父もお父さんも乱歩作品を歌舞伎にしてる家系なのよ。

みずき:…つまり乱歩から三島、湊へと流れる"人を標本にする"血筋に、役者の家系までうっかり呼び込まれてる、と。70年で剥製が標本に、絵空事が実写になっただけ。"美しいものを永遠に閉じこめたい"欲は、1ミリも進歩してないのね。……業、深すぎ。

ひなた:ふぁ〜……標本にするのって、たぶん"だいすき"の、いちばん不器用なかたちなのです。きれいなものを、腐らせたくなくて、時間ごと閉じこめちゃう……。わたしも、いちばんおいしいプリンは、こわくて最後まで食べられないのです。……ちょっと、わかる気がするのです。

まとめ:古い名作と新しい話題作は、たまに"血筋"でつながっている。今回つながっていたのは、少しばかり猟奇的な血筋だった。

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