シソンヌじろう、"望遠鏡でおじさんを鑑賞"する短編集
お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうが、8月5日に短編集『あの子が故郷に帰るとき』を刊行(双葉社)。引きこもりの少女が望遠鏡ごしにバス運転手を"鑑賞"する話などを収め、"こんなはずじゃなかった"の先で少しずつ面白くなる日常を、ユーモアと優しさで描く。
ひかり:ちょっと聞いて! 来月出る短編集のあらすじがね、ちょっとゾワッとするの……"引きこもりの女の子が、望遠鏡でのぞいたバス乗り場のベテラン運転手のおじさんを『鑑賞』するために猛勉強して、その人の近くに引っ越す"! ……これ、どういう気持ちなのー!?
みずき:…どういう気持ちも何も。それ、通報案件では?
ことね:ふふ、通報しないであげて。書いたのはね、意外な人なの。お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうさん。キングオブコントで優勝もしてる、あの津軽弁のおじさんや熟女のコントで知られる人よ。その新しい短編集『あの子が故郷に帰るとき』が、来月5日に出るの。
ひかり:えーっ、お笑いの人が小説!? しかもそんな、しっとりした話を書くんだ!?
ことね:しかも初めてじゃないの。じろうさん、前から小説を書いてて——それも「川嶋佳子」っていう、自分で演じてる架空の40代OLの"日記"として書くの。その一冊『甘いお酒でうがい』は、松雪泰子さん主演で映画にもなった。芸人さんの余技ってレベルじゃなくて、もう一人の書き手がちゃんといるのよ。
みずき:…で。さっきの"望遠鏡でおじさん鑑賞"は、けっきょくどういう話に落ちるの。ホラー? それとも笑うところ?
ことね:たぶん、どっちでもないの。紹介文だと、初恋や就職、大切な人との別れ——"こんなはずじゃなかった"の、その先で、日常が少しずつ面白くなっていく。それをユーモアと優しさで描くんだって。とがった入り口から、じんわり温かいところへ着地するタイプみたい。
ひなた:ふぁ〜……"鑑賞"って、きっと、こわい意味じゃないのです。だれかを遠くからじーっと見て、あんなふうになりたいなあ、って思う……あれ、わたしがショーウィンドウのケーキを見てる目と、おんなじなのです。すきすぎて、近づく勇気だけ、あとから追いつくやつ。
みずき:…なるほどね。距離を"通報案件"って笑うのは簡単。でも、いちばん遠くから見てる人が、いちばん本気なこともある。……芸人が女の名前で小説を書き続けるのも、たぶん、それと地続きね。
まとめ:お笑いの人が書く小説、と身構えると裏切られる。とがった入り口の先で待っているのは、じんわり優しい日常のほうだ。