主役は医者じゃなく“見張り役”、赤ひげの裏側を描く時代小説
砂原浩太朗の新作『小石川養生所青春譜』は、徳川吉宗が作った日本初の“無料の病院”を舞台に、不正を見張る新人同心を主人公に据えた時代小説。医療の理想と、その裏の汚職・陰謀が交差する。
ひかり:ねえ、江戸のお医者さんが主役の時代小説……かと思いきや! 主人公、お医者さんじゃなくて“見張り役のおまわりさん”なんだって。入り口からしておもしろくない?
ことね:砂原浩太朗さんの新作『小石川養生所青春譜』ね。先日、光文社から出たばかり。舞台の小石川養生所は、8代将軍・徳川吉宗が作った、日本で初めての“無料の医療施設”。貧しい人でもタダで診てもらえる、当時としては画期的な場所なの。
ひかり:タダの病院! それ江戸時代に!? ……で、なんでそこに“おまわりさん”がいるの?
ことね:養生所にはお金が動くでしょ。薬も、お米も、寄付も。だから不正がないか見張る、奉行所の同心が置かれてたの。主人公は20歳の新人同心・結城長三郎。亡くなったお父さんの跡を継いで、その見張り役を任されるところから始まるのよ。
みずき:…会計監査に来た新人が、事件に巻き込まれるやつでしょ。で、その“謎の紙片”みたいなのが、亡き父の遺した秘密——って展開まで見えた。
ことね:見えちゃった? でもそこが“医療×警察”の妙でね。人の命を救う理想の裏で、お金をめぐる汚職や陰謀がうごめく——優しさとダークさが同居してるの。奉行が実在の名奉行・根岸鎮衛なのも渋いのよ。
ひかり:あ、“赤ひげ”って聞いたことある。あれも養生所のお話だっけ?
ことね:そう、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』ね。あっちは“お医者さん”が主役。同じ養生所でも、今回は“見張る側”の目線——そこが赤ひげとの一番の違い。書評でも“シリーズ化してほしい”って評判なのよ。
ひなた:ふぁ〜…タダで診てもらえて、おかゆも出たのかなぁ。……でも、みんなにやさしい場所ほど、お金の入り口も多いってことなのです。だから見張りさんが要るんですねぇ。
まとめ:善意の場所ほど、裏でお金がうごめく。“赤ひげ”を見張る側から描いた、新しい江戸の物語。