「あとは話し合ってね」は丸投げ。対話は設計できる
CEDEC 2026で、日本マーダーミステリー作家協会の水井将太さんらが「対話をメカニクスとして設計する方法」を講演。結果が終盤の投票まで持ち越される「評価のラグ」が、疑いや迷いを生むと説いた。
ひかり:ねえねえ、授業で「あとはグループで自由に話し合ってね」って言われて、教室がシーンってなったことないっ? わたし、あれがいちばん苦手なんだよねー。
ことね:その「シーン」は、設計でなくせる——という話が先日のCEDECであったのよ。日本マーダーミステリー作家協会の水井将太さんたちの講演で、題がそのまま「"対話"をメカニクスとして設計する方法」。
みずき:…マーダーミステリーって、犯人役とかを割り振られて容疑者ごっこするやつでしょ。あれ、口が回る人が勝つだけじゃないの。
ことね:そこを疑うところから講演は始まるのよ。使うのはMDAという枠組み。ゲームをMechanics(明文化された仕組み)、Dynamics(そこから生まれる駆け引き)、Aesthetics(プレイ中に心に立ち上がる情緒)の3層で見るの。大事なのは、作り手が直接いじれるのはいちばん下のMechanicsだけということ。「楽しんでね」と願うことはできても、楽しさそのものを置くことはできないのね。
ひかり:えっ、じゃあ「疑う」とか「信じる」みたいな気持ちって、どこから湧いてくるのっ?
ことね:水井さんが名付けたのが「評価のラグ」。マーダーミステリーでは対話の結果がすぐ勝敗に反映されず、終盤の投票まで持ち越されるの。その宙ぶらりんの時間に、疑う・信じる・迷うが自然と湧いてくる。そのうえで対話の場を4つに切り分けているのよ。全員の前で話す全体会議は「共有の場」、こっそりやる密談は「非対称の場」、推理発表は「保障の場」、読み合わせは「同期の場」。
みずき:…密談を用意しておくのがミソね。禁止も強制もしないで、内緒話ができる場所だけ置いておく。そりゃ全員そわそわする。
ことね:例として挙がったのが『ICO』。仕組みは3つだけなの。R1を押し続けるとヨルダの手を握って歩けること、体力ゲージもミニマップも画面に置かないこと、ヨルダがこちらの意思と無関係に勝手に動くこと。それだけで「この子を守りたい」が立ち上がる。物語で説明せず、操作から情緒を起こしているのね。
みずき:…質疑では、登壇者のひとりの秋山さんが「60点あたりが及第点。避けるべきは40点や30点が出ること」って言ってたらしいけど。満点を狙わないって先に決めておくの、けっこう潔い。
ひなた:ふぁ〜……給食の時間、席替えしたら急にみんなしゃべるようになったのです。誰もおしゃべりが上手になったわけじゃないのですよ。机の並びが変わっただけなのです。
まとめ:会話が弾む部屋には、たいてい仕掛けがある。みんなが急に話し上手になったわけじゃない。