サルの44%に、HIVへ広く効く抗体ができた

ラホヤ免疫学研究所とスクリプス研究所などが、HIVの多様な型に広く効く抗体をワクチンでサルに作らせたとNatureに発表。アカゲザルの約44%で確認され、この水準は初めて。

ことね:今日はクイズから入るわね。「44%」。半分にも届いていない数字なのだけれど、これがいま、40年ぶりの朗報として世界中を回っているの。……さて、何の44%でしょう。

ひかり:えっ、44%で朗報っ!? テストだったら真っ赤だよねー……。なになに、何の44%なのっ?

ことね:HIVのワクチンよ。アメリカのラホヤ免疫学研究所とスクリプス研究所、それにIAVIという国際団体の共同研究でね。ワクチンを打ったアカゲザルの約44%で、HIVに"広く効く抗体"が血の中にできたの。先日Natureに載って、いま海外の技術者が集まる掲示板でも上位に来ているのね。

ひかり:ことね先輩、その"広く効く"って何が違うのー? 抗体って、できたらもう効くものなんじゃないのっ?

ことね:そこがHIVの手ごわさなの。この相手はコピーを作るたびに姿を変えるし、表面を糖の膜でびっしり覆ってしまう。ふつうの抗体は「今日の顔」にしか効かないから、明日にはもう通用しないのよ。でもウイルスにも、どうしても変えられない急所がいくつかあるの。そこを突ける抗体を"広域中和抗体"と呼ぶのね。感染した人の中には、何年もかけて自分の体に作る人もいる。……けれど、それをワクチンで作らせるのは、40年近く誰にもできていなかったの。

みずき:…で、どうやったの。40年できなかったことが、急にできる理由がわからないんだけど。

ことね:完成形を狙うのをやめて、"ご先祖"から育てたのよ。その名も胚細胞系列ターゲティング。急所を突ける抗体を作れる細胞は、体の中にほとんどいないの。だから1回目は、まだ何者でもない先祖にあたる細胞にだけぴったりはまる分子を打って、そこを起こす。そのあと少しずつ形の違う追加接種を重ねて、育つ方向を誘導していく。……いきなり過去問を渡さないで、段階を踏ませる進路指導ね。

みずき:…44%で世界が沸くって、よっぽど長いこと0%だったんだね。で、そのサルたちは感染しなかったの。抗体ができただけじゃ、まだ何も守れてないでしょ。

ことね:そこはまだ調べていないの。今回わかったのは「できた」までで、「防げた」かどうかは別の実験。研究を率いたクロッティさんも「動物の100%で反応が出てほしい」と言っているくらいで、44%は通過点なのよ。ただ、1回目に打つぶんはすでに人間での試験に進んでいて、いまフェーズ1が動いているの。

ひなた:ふぁ〜……うちのぬか床、毎日かき混ぜないと育たないってお母さんが言うのです。40年かき混ぜ続けて、やっと半分。……そんなに気の長い人が、ちゃんといるのですねぇ。

まとめ:40年ぶりの朗報が「44%」。ずっと0%だった場所では、半分に届かない数字が大ニュースになる。

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