速報はいちばん最後。3カ月遅れで出す雑誌
イギリスの季刊誌「Delayed Gratification」は、直前の3カ月の出来事を、騒ぎが収まってから振り返って載せる。2011年の創刊から掲げる看板が「速報はいちばん最後」。
ことね:今日は現物を持ってきたの。イギリスの雑誌なのだけれど、いちばん新しい号に載っているのが、直前の3カ月に起きたこと。……つまり、丸ごと3カ月遅れで出しているのよ。
ひかり:えっ何それっ! 3カ月前のニュースって、みんなもうスクロールして通り過ぎちゃってるよねっ? それで雑誌が売れるのー!?
ことね:売れているのよ。名前が『Delayed Gratification』——「あとからくる満足」ね。2011年に創刊された季刊誌で、看板がそのまま「速報はいちばん最後」。24時間ニュースも実況も追わない代わりに、記者に時間を渡すの。専門家に当たって、証拠をふるいにかけて、全体を見渡すための時間を。
みずき:…で、それ誰得。3カ月待ってから読みたい人って、どこにいるの。
ことね:そこが逆説なのよ。速報の時点では、どうしても分からないことがあるでしょう。結局どっちが正しかったのか、あの話はその後どうなったのか。騒ぎが収まって、みんなが忘れたころに戻る。1冊には、その3カ月に起きたことを日付順に並べた記録と、長い記事と、図解と、描き下ろしの表紙が入っているの。
みずき:…推薦文がひどいんだけど。「英国で2番目にいい雑誌」って、Private Eyeの編集長のイアン・ヒスロップが。自分のとこを1番に置いただけでしょ、それ。……それを堂々と載せてるの、嫌いじゃない。
ひかり:あははっ、載せちゃうの強いっ! ……でもさ、わたしも通知でびっくりしたニュース、次の日には何だったか思い出せないことあるんだよねー。
ことね:この雑誌がいま話題になっているのも、実はそこなの。海外の技術者が集まる掲示板で改めて掘り起こされて、上位に上がってきているのよ。世の中でいちばん速さに敏感な人たちの間で、「速さで戦わない雑誌」の話が回っている。
みずき:…速報をあきらめた雑誌が、15年続いてる。追いかけっこの外側にも、ちゃんと道はあるってことね。
ひなた:ふぁ〜……カレーは作った日より、次の日のほうがおいしいのです。ニュースにもそういうのがあるなら、わたし、3カ月くらいなら待てるのですよ。
まとめ:速報をあきらめた雑誌が15年。昨日いちばん驚いたニュース、もう思い出せないかもしれない。