日本の月着陸機を運んだロケット、5日に月へ落ちる
去年1月にispaceなどの月着陸機を送り出したファルコン9の上段が、8月5日に月へ衝突する見込み。4トン級の機体が秒速2.4キロでぶつかり、直径17メートルほどのクレーターができると予測されている。
ひかり:部室のカレンダー見てーっ! 8月5日のとこ、わたし赤マルつけといたよっ! ……ロケットのお尻が、月にぶつかる日っ!
みずき:…燃えないゴミの日?
ことね:……分類としては、あながち間違っていないのよ。落ちるのはファルコン9というロケットの「上段」——荷物を宇宙へ押し出したあと、切り離されて捨てられる二段目の部分ね。去年の1月15日に打ち上げられた機体で、そのとき積んでいたのが月着陸機2機。アメリカのファイアフライの「ブルーゴースト」と、日本のispaceの「レジリエンス」よ。
ひかり:えっ、日本のも乗ってたのっ!? じゃあそのロケット、お仕事はちゃんと果たしたんだよねー? ……なのに、なんで月に落ちちゃうのっ?
ことね:仕事は終わったの。着陸機を送り出したあとは誰も操縦していなくて、地球と月のあいだをふらふら回っていたのよ。1年半ね。それを見つけたのがビル・グレイさん——小惑星の軌道を計算するソフトを個人で作っている天文家なの。小惑星探しの望遠鏡と、ミシシッピ、ユタ、北京、イングランドのアマチュアの人たちが撮った観測を1000件以上つき合わせて、去年の9月に「これ、月に当たる」と気づいたそうよ。……この人が月への衝突を予告したのは、これで2回目。1回目は4年前の3月でね、最初は「ファルコン9の上段だ」と発表して、あとから「ちがった、中国の長征3Cだった」と自分で訂正しているの。
みずき:…打ち上げた側は、もう見てないんだ。……よその国の素人が撮った星の写真を足し算して、落ちる先を教えてもらってる。
ひかり:それで、けっきょくどこに落ちるのっ? わたし望遠鏡借りてくるっ!
ことね:8月5日の6時34分32.9秒——世界標準時ね。日本時間なら同じ日の15時34分、誤差は数秒。場所は月の表側の、西の縁に近いアインシュタインというクレーターのあたり。重さは4〜5トン、高さは5階建てのビルくらいあるものが、秒速2.4キロでぶつかるの。火薬3トンぶんのエネルギーが出て、直径17メートルほどの穴があく。……ただ、光そのものは見づらいそうよ。縁の近くだから、舞い上がった破片のほうなら見えるかもしれない、とは書いてあるわ。
みずき:…この前の、屋根をぶち抜いた隕石とは逆だね。あっちは宇宙から勝手に降ってきて、誰も予告できなかった。……こっちは自分たちで打ち上げたのに、落ちる時刻が秒で出てる。
ひなた:ふぁ〜……行きは荷物を届けて、帰りは自分が荷物になるのですね。……お月さま、受け取ってくれるでしょうか。
まとめ:持ち主が追いかけていない4トンの落下時刻を、赤の他人が秒まで割り出した。8月5日の15時34分32秒、誤差は数秒。