AIが道具を使う共通規格から、あいさつが消えた
AIに外部の道具を使わせる規格MCPの新版が公開。通信のいちばん最初に交わしていた「initialize」の握手とセッションIDが廃止され、1回のお願いだけで完結する形になった。
ひかり:みずきーっ、ちょっとそこ立ってっ! ……はい、じゃあ改めまして。星川ひかり、高1、団長ですっ! 本日はよろしくおねがいしますっ!
みずき:…毎日おなじ部室で会ってるんだけど。……で、なに。
ひかり:あのねっ、AIに道具を使わせるときのお約束ごとがあってね、そこから「はじめまして」が消えちゃったんだってっ! ……だから今のうちにいっぱいやっとこうと思ってっ!
ことね:……その理屈は分からないけれど、話自体は本当よ。MCPというの。AIが自分の外にあるもの——ファイルとか、カレンダーとか、社内のデータベースとか——を触りにいくときの、共通の決まりごとね。先週その新しい版が出て、通信のいちばん最初にやっていた「initialize」というやりとりが丸ごと無くなったの。正確には、そこで結んだ回線を覚えておくためのセッションIDも、一緒にね。
ひかり:じゃあ、いきなり用件から言うのっ? 「もしもし」なしでっ?
ことね:そう。代わりに、1回1回のお願いのほうに、自分の名前と対応バージョンを小さく添えて送るの。「あなた、何ができる人?」と聞くための server/discover という窓口も、新しく必須になったわ。ついでに ping や、ログの細かさを頼む命令も消えた。Roots・Sampling・Logging という3つの機能は「もう新しく使わないで」扱いになって、消すまでの猶予は最低12カ月、と初めて明文で決められたの。
みずき:…あいさつをやめて、毎回名乗ることにした。……それ、あいさつでは?
ことね:ふふ、そこが違うのよ。あいさつは「覚えていてもらう」ための儀式でしょう。毎回名乗るのは、覚えていてもらわなくていい、という宣言なの。だからお願いがどのサーバーに届いても構わなくなる。前は「最初に握手した相手に、以降も必ず同じ相手に届ける」仕掛けが要ったのだけれど、それが丸ごといらなくなったわ。試した人がいてね、送金の確認待ちの途中で、サーバーのプロセスを殺したの。それでも、まっさらに起き直した別のプロセスが、こちら側の持っていた札を受け取るだけで、送金の続きをやりきったそうよ。……TypeScript用の部品もv2に作り直されていて、昔どおり「はじめまして」を送ってくる相手も、ちゃんと受け付けてくれるの。
ひかり:えっ、途中で電源落としても平気なのっ!? そ、それはそれでちょっと怖くないっ!?
みずき:…覚えててもらうのをやめて、こっちが毎回ぜんぶ持っていく。……相手が忘れっぽいほうが、じつは頼りになるって話。
まとめ:あいさつをやめて、毎回名乗ることにした。AIと道具の会話は、相手が全部忘れても困らない形に作り替えられている。