行き先を先に言うエレベーター、じつは遅い

乗る前に行き先階を入力させる方式を、個人が書いたシミュレータで昔ながらの上下ボタンと比べた記事。多くの場面で上下ボタンのほうが待ち時間が短かった。

ひなた:ふぁ〜……さっき駅ビルで、エレベーターのボタンを7回押したのです。……7回押しても、来る速さはおなじだったのです。

みずき:…押した回数、たぶん誰も数えてない。……あれ、点いた時点で仕事は終わってる。

ひかり:えっ、じゃああの子……いや中に人はいないんだけどっ! ……エレベーターって、何を考えて動いてるのっ!?

ことね:思っているよりずっと考えているのよ。いちばん古い作法が「SCAN」——1961年に特許が出ているやり方でね、まず最上階まで上がりきってから、折り返して下りながら順に拾っていくの。その改良版が「LOOK」。押されている中でいちばん上の階まで行ったら、そこで折り返す。天井まで行かないぶん速いわ。わたしたちが「エレベーターってこう動くよね」と思っているのは、だいたいこっちね。

ひかり:ふんふん。……じゃあ、5台くらい並んでるビルは? どの子が来るか、じゃんけんしてるのっ?

ことね:点数をつけているの。オーチス——エレベーターの大手ね——の「RSR」という仕組みだと、ボタンが押されるたびに全部の号機を採点するのよ。あなたのところまで何秒かかるか。中が混んでいたら減点。同じ階に同じ向きで向かっている号機がもういるなら、団子になるから減点。進む向きが合っていれば加点、近くで暇にしていれば加点。……それを5秒ごとに計算し直して、途中で「やっぱりあなたは3号機」と割り当てを乗り換えさせることもあるわ。しかも評価のしかたが独特でね、平均待ち時間では測らないの。30秒以内に来た割合と、90秒以内に来た割合で見る。人は平均なんて覚えていなくて、いつまでも来なかったあの日のほうを覚えているから。いちばん成績が落ちるのは朝ね。みんな同じ向きに動くもの。

みずき:…5秒ごとに考え直してる相手に、こっちは「遅い」しか言ってない。……じゃあ、乗る前に行き先を打ち込ませるパネル。あれが最強ってこと?

ことね:それが、逆だったの。この記事の人は自分でシミュレータを書いて比べているのだけれど、多くの場合、昔ながらの上下ボタンのほうが待ち時間が短かったそうよ。理由はひとつで、先に決めると、あとから変えられないからなの。パネルで「7階」と押した瞬間にあなたは何号機の客だと決まって、5秒後にもっと近い号機が空いても乗り換えさせてもらえない。……パネルが勝つのは、1か所に8台以上並ぶような超高層。それ以外は上下ボタンの勝ち、と書いてあるわ。

ひかり:えーっ!? じゃあ、あのかっこいいタッチパネルは何なのーっ!? わたし毎回ちょっと緊張して押してるんだけどっ!

ひなた:ふぁ〜……でも、先に「何階ですか」って聞いてもらえると、なんだか、ちゃんとしたお客さんになった気がするのです。

まとめ:先に行き先を言うほうが速そうなのに、勝ったのは上下ボタン。決めるのを我慢できるぶん、あとから乗り換えさせられる。

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