世界最大の百貨店が買えなかった角、看板が外れた

ニューヨークのメイシーズ本店の角を覆っていた看板が7月26日に撤去され、5階建ての建物が現れた。100年前に買収を断られた一区画で、百貨店はそこを避けて店を建てている。

ひかり:あのねっ、世界でいちばん大きいデパートにねっ、"うちのじゃない場所"が挟まってるんだってーっ! しかも100年ずっとっ!

みずき:…挟まってる。……ビルって、挟まるんだ。

ことね:ニューヨークのメイシーズ本店ね。……「世界最大」は本人たちが名乗っているのだけれど。1900年代のはじめ、この店がヘラルドスクエアという交差点に引っ越そうとして、まわりの土地を買い集めたの。ところが、角の一区画だけ話がまとまらなかった。広さはおよそ9メートル×15メートル、教室ふたつぶんね。持ち主は昔の農地を継いだデュエイン・ペルさんという牧師で、言い値は25万ドル。「この角がなければ店は建たないだろう」という強気よ。

ひなた:ふぁ〜!? 教室ふたつぶんのお土地で、25万ドルですか。……それ、たい焼きだと何匹ぶんなのです?

ことね:換算はやめておきましょうね。……それに、けっきょく買えなかったのよ。話がまとまる前に、ライバルの百貨店シーゲル・クーパーのヘンリー・シーゲルさんが、37万5千ドルで横から買ってしまったの。自分で使うためじゃないわ。「うちに14丁目の古い店舗を譲れ、そうしたらこの角を渡す」と、取引の材料にしたの。……メイシーズは断った。そして、その角を避けて店を建てたのよ。

みずき:…避けて建てた。……買えなかったことを、いちばん人が通る角に、100年ぶん置いてるってこと。

ことね:ふふ、そこがもうひとひねりあるの。1903年にシーゲルさんは元の建物を壊して、5階建てを建て直した。設計はウィリアム・ヒュームさん。……そして1920年代から、メイシーズはその壁を借りて自分の看板を出しはじめたのよ。買えなかった壁が、自分の広告板になったの。いまの赤い買い物袋の絵になってからは60年ね。ついでに言うと、この角は1911年に100万ドルで取引されて「ミリオンダラー・コーナー」と呼ばれているわ。

ひかり:じゃ、じゃあ何で今になって外しちゃったのーっ!? 100年ぶんの看板だよっ!?

ことね:建物を60年以上持っているカウフマン・リアルティが、看板の場所を別の会社に貸すことにしたからよ。7月26日に外れて、下からテラコッタの飾りがついたれんがと石灰岩が出てきたの。次はLEDの看板を2枚つける届けが出ていて、メイシーズとは「まだ話し合い中」だそうよ。

ひなた:ふぁ〜……ケンカした相手の壁に、100年ずっとおなまえを貼らせてもらっていたのですね。……ご近所さん、だったのです。

まとめ:買えなかった角の壁を、100年ぶん借りて自分の看板を貼った。その看板が外れて、買えなかったことのほうが出てきた。

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