寝たまま夜中の思いつきを書く、アリス作者の発明

『不思議の国のアリス』のルイス・キャロルが1891年に完成させた筆記具「ナイクトグラフ」。四角い穴を16個あけたカードと、点と線でできた専用の文字で、灯りをつけずに寝床のまま書き留められるようにした。

みずき:…冬の夜中の2時。布団から出て、ろうそくに火をつけて、書きとめる。……火がつくころには、書きたかったことのほうが消えてる。

ひかり:えっ、それめっちゃわかるっ! ……ていうか誰の話っ!? みずきの実体験っ!?

ことね:ルイス・キャロル。『不思議の国のアリス』を書いた人ね。本業はオックスフォードで数学を教えていた先生で、夜中に浮かんだことを書き留めるのに、いちいち起きるのが我慢ならなかったの。本人いわく「一度でも試した人なら、あれがどれほど不快か同意してくれるはずだ」。……それで1891年、道具のほうを作ったのよ。

ひかり:起きるのが嫌でっ、そこから発明までいったのっ!?

ことね:名前はナイクトグラフ。ギリシャ語の「夜」から取ったもので、はじめは「目が見えない」を意味する語から〈タイフログラフ〉と呼んでいたのを、あとで改めているの。中身は、四分の一インチ四方の穴を16個あけたカード。穴ひとつに文字ひとつを書いて、一行ぶん埋まったらカードを下にずらす。……真っ暗だから、ずらす量は勘よ。

みずき:…勘でずらして、暗闇で、まともな字が書けるの。

ことね:ならないように、字のほうを作り替えたの。四角い枠の辺に点と線を置くだけの専用文字で、どの字にも左上に必ず大きな黒い点を打つ。上下と左右を間違えないための目印ね。本人の記録では、26文字のうち23文字は元のアルファベットに似せられた、と。ほかに「and」と「the」の専用文字と、このあとは数字ですよ・文字ですよ・日付ですよ、を知らせる記号まで足しているの。

みずき:…残りの3文字は、似せるのを諦めた。……そこ、正直に書き残してるんだ。

ことね:ええ。それでね、この人、自分の寝起きの都合から始めたのに、こうも書き残しているの。「目の見えない人が、何もできないまま過ごしている孤独な時間のことを考えてごらん。彼らなら、喜んで自分の考えを書き留めるだろう」って。

ひなた:ふぁ〜……夜中に思いついたことって、朝に読み返すと「なんでこれ書いたのです?」ってなるのです。……でも、書いてないと、思いついたことがあったのも忘れちゃうのですよ。

まとめ:布団から出たくない、で始まった発明が、最後は「暗くても書ける人を増やす」話になった。3文字だけ、似せるのを諦めて。

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