街の無料本棚の地図、もらった元には返さない
街角の無料本棚を集めた地図「Book Corners」の作者が、利用者の登録した本棚をOpenStreetMapへ戻すのはやめると書いた。初期データは、そのOSMからもらっている。
ひなた:ふぁ〜……このあいだ公園のすみっこに、小さい木の本棚が立ってたのです。ガラスの戸がついてて、だれのでもないのに、本がぎゅうぎゅう入ってたのです。
ひかり:あーっ、あれでしょっ! 好きなの持って帰っていいし、読まなくなった本を置いてってもいいやつっ! ……で、それがどうしたのっ?
ことね:あれが世界のどこにあるかを集めた地図サービスがあるのよ。Book Cornersといって、アンドレア・グランディさんという人がひとりで作っているの。……その人が先日、「利用者が登録してくれた本棚の場所を、OpenStreetMapには返さない」とブログに書いたのよ。
みずき:…そのオープンストリートマップって。Book Cornersが最初のデータをもらったとこ、だよね。
ことね:ええ。本人が「初期データの多くはOSMから来ている」と正直に書いているわ。……補足すると、OpenStreetMapは世界中の人が手で描き足している無料の地図ね。そこから本棚の場所を分けてもらってサービスを始めて、そのあと増えたぶんは戻さない、という形になるの。
ひかり:えーっ、それ気まずくないっ!? もらいっぱなしじゃんっ! ……なんで返さないのー!?
ことね:意地悪でやめたわけじゃないの。OSMには、外から大量のデータを流し込むときの作法が決まっているのよ。投入専用のアカウントを作って持ち続ける。Wikiに計画書を出す。データの出どころ、ライセンス、項目の対応づけ、重複の見つけ方、使うソフト、品質チェック、変更履歴の方針、失敗したときの巻き戻し手順まで書く。フォーラムに提案を立てて、影響が出る地元のコミュニティに連絡して、審査の期間を待って、出た懸念にぜんぶ答える。……そのあとも、アカウントと計画書と議論と変更履歴を恒久リンクでつないだまま保って、問い合わせと取り下げの窓口を開け続けるの。
みずき:…本棚1個に、書類ひとそろい。……それ全部払っても、増えるのは「近所の棚が地図に載る」だけ。
ことね:本人もそこを書いているの。「この連携を回す時間は、本の見つけやすさや、審査や、写真や、使いやすさや、翻訳や、スマホでの見やすさに使えたはずの時間だ」って。……もうひとつ根っこの理由もあってね。利用者が「この本棚を送っていいよ」と言ったことは、その情報をOSMのライセンスで世界に開放していい権利をもらったことと同じではない、と。結びの一文は短いわ。「だから、これは出さないと決めた機能のひとつです」。
ひなた:ふぁ〜……本を置いていくための棚なのに、棚の場所のほうは置いていけなかったのですね。
まとめ:本を置いていく棚の地図は、もらった元には返らない。ずるをしたのではなく、返すための書類が本棚より重かった。