25年ものの魚醤90万リットル、ようやく撤去へ
カナダ・ニューファンドランドの人口300人ほどの町で、2001年に閉じた工場に残された魚醤90万リットルの撤去が始まった。州の予算は200万ドル、10月完了予定。
ひなた:ふぁ〜、きょうのお弁当、子持ちししゃもだったのです。おなかにつぶつぶがぎっしりで、しあわせなのです。
ひかり:あーっ、それ今日の話につながるかもっ! そのつぶつぶのせいで、25年くさいままの町があるんだってーっ!
ことね:まあ落ち着いて。順番に整理しましょう。カナダのニューファンドランド島、セントメリーズ——人口300人ほどの海辺の町ね。そこに1990年、ベトナムから来たサーン・ゴーさんが魚醤の工場を作ったの。原料は、地元の加工場で余っていた雄のカラフトシシャモよ。
ひかり:えっ、なんで雄だけ余るのー?
ことね:雌の卵——日本で「マサゴ」と呼んで軍艦巻きにのっている、あれね。あれを日本へ輸出するのが加工場の商売だったから、雄はまるごと捨てられていたの。それを塩と一緒に漬けて魚醤にしよう、というのがゴーさんの発想。……理屈としては、とても正しいのよ。
みずき:…で、その正しい理屈は、どこで転んだの。
ことね:規制の壁にぶつかって、2001年に工場が閉まったの。ただ、仕込みの途中だった中身は残った。高さ3メートルほどのタンク110基に、90万リットル。それが25年、そのままよ。
ひかり:25年っ!? 夏とか、町どうなっちゃうのー!?
ことね:その夏がいちばんつらいそうよ。窓と戸に板を打ちつけて、家を空ける住民もいたと報じられているの。……それが今週、州が出した200万ドルでようやく本格的に動き出した。ピートモス——水苔ね——に吸わせて、トラック200台ぶんを、遮水シートを敷いた穴に運ぶ。10月に終わる予定。
みずき:…町長のコメントがいい。「『ソース工場の町長』と呼ばれるのは、そろそろ終わりにしたい」。25年ぶんの肩書きが、10月に外れる。
ひなた:あのですね……25年も塩に漬かっていたのなら、すごくおいしくなっている可能性もあるのです。だれも味見していないのですか?
ことね:……食品科学者の人が「塩分が高いから病原菌はいないと思う」とは言っているの。ただ味のほうは「酸敗臭とアミンが前に出て、たぶん圧倒的」ですって。記者もその科学者も「食べてみたい」と言いながら、結局だれも口をつけていないのよ。
まとめ:90万リットル、25年もの。「塩が濃いから病原菌はいない」までは分かっている。そこから先へ進んだ人が、まだいない。