創刊70年のミステリ誌、編集長は27歳
1956年創刊の『ハヤカワ・ミステリマガジン』が今年70周年。今年1月号から編集長を務める井戸本幹也さんは1997年生まれの27歳で、歴代3番目の若さだという。
ひかり:ねえ聞いてっ! 70年つづいてる雑誌の編集長が、27歳なんだってーっ! うちで言ったら……ことね先輩が来年いきなり顧問になる感じっ!?
ことね:たとえが乱暴ね。……でも、驚く場所は合っているの。『ハヤカワ・ミステリマガジン』——1956年に、アメリカの同名誌の日本版として早川書房が創刊したミステリ専門誌よ。今年で70周年。その編集長に今年1月号から就いたのが、井戸本幹也さん。1997年生まれの27歳ね。しかも2021年に入社したときは営業志望で、編集部に配属されたのは会社の采配なの。
みずき:…で、最年少なの。
ことね:惜しくも3番目。いちばん若いのが26歳で引き継いだ生島治郎さん、2番目が都筑道夫さん。……どちらも、のちに小説家として名を残した人よ。本人もインタビューで笑っているわ。「これは、会社を辞めたら作家になるしかないのか(笑)」。
ひかり:あははっ、逃げ道が作家しかないっ! ……で、その人は雑誌をどうしたいのー?
ことね:軸がはっきりしているの。「小説、つまりストーリーありきで、そこからどんどん派生していく雑誌作り」。まず増やしたいのが海外の短編で、「近年は、海外短編を載せられていなかったという反省があります」「アンソロジーのような気持ちで読んでほしい」ですって。そのうえで「少しマニアックな方へ持っていこうかとも考えています」。次の号の特集が、その宣言どおりなの。「シャーロック・ホームズもどきたち」。
ひかり:もどきっ!? ニセ・ホームズ大集合ってことっ!? ……なんでその名前なのー?
ことね:さっき出た都筑道夫さんの『名探偵もどき』から取ったそうよ。……ただ、足元はけっこう厳しいの。この雑誌、去年から隔月刊をやめて季刊になっていて、出るのは年4号だけ。70周年の記念号を作っていたときは部下がひとり辞めて、入社2年目の部員とふたりきりだったそうよ。70年ぶんの掲載作を並べた総目録は、勤続10年のアルバイトさんに頼んだ、って。
ことね:それでも配分は決めているのよ。先輩編集者からもらった助言が「確実に読んでもらえる号を作ったうえで、遊ぶ号を作りなさい」。だから年4号のうち、読者投票のランキング号だけは必ず出す。残りの3号で、新しい企画を試すの。
みずき:…70年ぶんの目次を、社員ふたりと10年もののバイトで作ったのか。……そのうえ、年4回しか出ないのに3回を実験にまわす。ふつうは、逆をやる。
まとめ:70年ぶんの総目録を作ったのは、社員ふたりと勤続10年のアルバイト。その雑誌が、年4号のうち3号を「遊ぶ号」に使うと言っている。