サハラを太陽光で埋めたら、アマゾンが乾く

「サハラ砂漠をソーラーパネルで埋め尽くせばいい」という15歳の問いが話題に。気候モデルの研究では、砂漠の2割を覆うだけで現地が1.5℃上がり、熱帯の雨の帯が北へずれて、その分アマゾンの雨が減るという。

ひなた:あのですね。さっき地図を見ていて、おもいついたのです。サハラさばくって、まっさらで、すごく日あたりがいいのです。……あそこいちめんにソーラーパネルをしきつめたら、でんきの問題、ぜんぶ終わるのではないですか?

ひかり:えっ待ってひなた、それ今ネットでめちゃくちゃ回ってるやつだよっ! 15歳の子がおんなじこと聞いて、それがバズってるのっ! ……えっ、ひなたも15歳じゃんっ! なんかシンクロしてるーっ!

ことね:いい着眼点よ。しかもこれ、笑い話じゃなくて気候の研究者が本気で計算している問いなの。まず大きさから。サハラは約900万平方キロ——日本およそ24個ぶんね。全部覆えば世界のエネルギーは軽くまかなえる。ネットで回っている数字は18倍だけれど、何を「需要」に数えるかで幅が出るの。研究者本人が書いた解説だと「今の世界の需要の4倍」ね。ちなみにパネルが電気に変えられるのは、届いた光の15%くらいよ。

みずき:…で、まだ埋まってない。ってことは、埋めない理由があるってことでしょ。

ことね:そこなの。鍵は「色」よ。砂は白っぽくて光をはね返すでしょう。パネルは黒くて吸う。地面の色が変わると、その場所の空気の暖まり方が変わるの。2018年にメリーランド大学のチームがScienceに出した研究では、サハラに巨大な太陽光と風力を作ると、現地の雨が増えて緑が戻る、といういい話だったのよ。

ひかり:えっ、いいじゃんそれっ! 電気もできて砂漠が緑になるとか、一石二鳥じゃんっ! ……あれ、じゃあ何がまずいのー?

ことね:雨は増えるの。ただし、どこかから持ってきているのよ。2021年にルンド大学のZhengyao Luたちが、今度は地球全体でモデルを回したの。サハラの2割をパネルで覆うと現地が1.5℃、地球の平均も0.16℃上がる。5割なら2.5℃と0.39℃。その熱が空気の流れを組み替えて、赤道あたりにある「雨の帯」を北へずらすのよ。世界の雨の3割以上を降らせている帯ね。……結果、サハラで増えたのとほぼ同じ量の雨が、アマゾンから消えるの。おまけに北極の海氷が余計に溶けて、北アメリカと東アジアの沿岸に来る台風も増える、と出ているわ。

ひかり:ええっ、地球の反対側っ!? 砂漠に板を並べただけで、アマゾンが乾くのっ!? そんなの誰が予想するのーっ!

みずき:…部屋のすみにヒーター置いたら、廊下の風向きまで変わるでしょ。地球は、その部屋に壁がないだけ。……環境にいい話って、たいてい自分の庭の外を数えてない。

ひなた:ふぁ〜……あの、おなべのお湯って、はしっこをおたまでぐるってすると、まんなかまでぜんぶ回るのです。……わたし、はしっこだけ動かすつもりだったのです。

まとめ:砂漠に雨を降らせる方法は、もうモデルの中にある。降った分だけアマゾンで降らなくなる、というおまけつきで。

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