芸人が書いた小説、イジらないと決めた10人

シソンヌ・じろうの短編集『あの子が故郷に帰るとき』が双葉文庫で発売。写真1枚から知らない女性の人生を想像して書いた10編で、本人は「意地悪な目線とかイジる目線では決して描かない」と語る。

ことね:「意地悪な目線とかイジる目線では決して描かない」……ねえみずき、この一文、どう思う?

みずき:…なにそれ。あたしへの当てつけ?

ことね:違うわよ。お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうさんが、自分の小説について言った言葉なの。短編集『あの子が故郷に帰るとき』が今月5日に双葉文庫から出て、そのインタビューでね。女性が10人、それぞれ主人公になっている本よ。

ひなた:ふぁ〜、コントの人が小説を書くのですか。じゃあ、ぜんぶ笑える話なのですね。

ことね:それがそうでもないの。もとは2018年に別の題で出た本で、ローカルライフマガジン「雛形」の連載がもとになっているのよ。手がかりは、写真家の志鎌康平さんが撮った女性のポートレート1枚だけ。会ったこともない相手の来歴を想像して書く、という書き方だったの。

みずき:…写真1枚。それ、いちばん意地悪ができる条件じゃん。知らない人なんだから、何を書いても本人から文句は来ない。

ことね:ええ。だからこその、さっきの一文ね。じろうさんは、メイクやおしゃれをする女性のいいところを「褒め称えたい」と言っているの。ご本人は青森の弘前から出てきた人で、若いころに抱えていた謎の劣等感が、書いた女性たちと重なるんじゃないか、とも。カッコ悪い部分や弱さも面白がってほしい、と。

みずき:…笑わせる仕事の人が、笑いものにはしないって先に決めてるわけね。……ずるい。それがいちばん強い。

ことね:ちなみに次の小説を書く予定を聞かれて「ないですね」と即答しているの。自分が書いたものは、自分と長谷川さんでやるのがいちばん面白いから、と。文庫のあとがきも締め切り間際に書いて後悔した、なんて言っていたわ。

ひなた:ふぁ〜……さっきのお話ですけど、みずき先輩とおんなじなのです。ひなたのお弁当をぼろくそに言うのに、卵焼きだけはいつも残しておいてくれるのです。

まとめ:笑わせる人が、笑いものにはしないと先に決める。それだけで、10人ぶんの人生が守られていた。

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