3200年前の砂漠に、ブランドとパチもんがあった
アラビア半島のオアシスで焼かれた土器が、3200年前すでに「ブランド」として機能していた、とウィーン大学のチームがPLOS Oneに発表。よそでは似せた模造品まで作られていた。
ことね:結論から言うわね。「ブランドに弱い」のは、現代人がSNSに毒されたせいではないのよ。少なくとも3200年前から、人類はきっちりそうだったの。
ひかり:えっ何それ! 3200年前って……えーっと、日本だと何してた時代っ?
ことね:日本ならまだ縄文時代よ。向こうは青銅器時代の終わりごろね。ウィーン大学のマルタ・ルチアーニさんたちが、学術誌PLOS Oneに出した論文なの。題がそのまま「ブランドをつくる」。調べたのは、いまのサウジアラビア北西部、クライヤという砂漠のオアシスで焼かれた土器よ。黒と赤の二色で、幾何学模様と、ちょっと崩した動物や人の絵が入っているの。
みずき:…ただの土器でしょ。模様が似てるからブランドでした、はさすがに大げさじゃない?
ことね:だからそこを丁寧に潰したのが今回なの。数十点の壺を三通りに調べたのよ。ひとつ、形の作り方の癖を見る。ふたつ、薄く削って顕微鏡で土そのものを見る。みっつ、中性子をあてて、含まれる微量な元素の「指紋」を取る。すると、遠く離れた場所で出てきたものまで、粘土の出どころも作り方も同じだったの。つまり一か所でまとめて焼かれて、そこから運び出されていた。見た目だけでなく、中身まで揃っていたのよ。
ひかり:ことね先輩、遠くって、どのくらい遠くなのー?
ことね:北へ数百キロ。いまのヨルダン南部のテル・エル・ヘレイフェや、エジプトの女神ハトホルを祀った、ティムナの聖所からも出ているの。作り始めたのが3600年前で、あの見た目が固まったのが3200年前。そこからさらに千年、鉄器時代まで続いているのよ。それに論文が「ブランドだ」と判断した条件が八つあって——決まった見た目、材質の揃い方、作り方の連続性、一か所での生産、輸出、商売としての広がり、評判。そして八つめが「よそで真似された」。
ひかり:パチもんっ!? 3200年前にもうパチもんがあったのっ!?
みずき:…そこが本物の証拠なんでしょ。真似されるほど欲しがられてた、って。……千年もったロゴかあ。3年でリニューアルして「刷新しました」って言ってる会社、ちょっと出直してきたら。
ひなた:ふぁ〜……ひなた、給食のお皿がぜんぶ同じ柄なのは、なんとも思わないのです。でもおうちのお茶碗が自分のだけ違う柄なのは、うれしいのです。……3200年前の人も、あの模様のお皿でごはんを食べるのが、ちょっと自慢だったのですね。
まとめ:ブランドに弱いのは現代人の病気ではなかった。3200年前の砂漠で、人はもう模様で壺を選んでいた。