いまの歴史小説は、変化球ばかり投げてくる

小説家の周防柳と澤田瞳子が、周防の新刊『南朝 風姿花伝』の刊行を機に対談。澤田はいまの女性作家を「直球をあんまり投げない、独自の変化球を持っている」と評し、南北朝ブームの到来に期待を寄せた。

ことね:今日は本の話をしてもいい? といっても中身の話ではなくて、書いた人ふたりの立ち話のほうなのだけれど。歴史小説を書いている周防柳さんと澤田瞳子さんの対談ね。澤田さんが、いまの女性の歴史小説家についてこう言っているのよ。「比較的、直球をあんまり投げないというか。いろんな独自の変化球を持っていますよね」。それから「全体に元気で、みんな好き勝手なことをやっている」とも。

みずき:…褒めてる? それ。

ことね:全力で褒めているわ。「テーマの選び方が独自で、それぞれ切り口が違うのが面白い」と続くの。澤田さんがデビューしたころは古代史を書く人がほとんどいなくて、いま書き手が増えたのが嬉しい、という流れなのよ。

ひかり:へえー! じゃあその新刊は、どんな変化球なのー?

ことね:主人公が世阿弥ね。六百年ほど前に能を大成した人で、『風姿花伝』——「初心忘るべからず」で有名な、あの本を書いた人よ。ところが晩年に、佐渡へ流されているの。しかも理由が公の記録に残っていなくて、いまも分かっていないのよ。周防さんは、その謎解きを南朝の側から組み立てたの。

ひかり:なんちょう……ごめんことね先輩、それって何ー?

ことね:天皇の家が南と北に分かれて、朝廷がふたつ並んでいた時代ね。ややこしくて、澤田さんも「南北朝って、難しいですよね。天皇もいっぱいいるから」と笑っているの。そのうえで「南北朝、今からブーム来るといいなと考えています」ですって。

みずき:…天皇がいっぱいいてややこしい時代を、いまから流行らせにいくんだ。強気。

ことね:強気ではあるわね。ただ周防さん本人はかなり慎重で、能楽の研究者ではないからと、雑誌に連載していたときのタイトルは『世阿弥異聞』にしていたそうよ。「異聞」——よそから伝わってきた別の話、という断り書きね。そもそもの発端も、七、八年前に版元の社長から「世阿弥はどうか」と持ちかけられたことなんですって。

ひなた:ふぁ〜……ひなた、『ふうしかでん』はおまんじゅうの名前だと思っていたのです。……でも、なんで流されたのか分からない人のことを、六百年たってから七、八年かけて考えてくれる人がいるのですね。

まとめ:南北朝はまだブームではない。でも、ブームにする気の人が少なくとも二人いた。

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