Amazonの「人力AI」、9月30日で店じまい

機械には難しい細切れの作業を世界中の人間に配ってきたAmazonの「Mechanical Turk」が、9月30日で終わる。2005年開始で、ピーク時は50万人以上が登録していた。

ことね:ちょっと想像してみて。チェスがとんでもなく強い機械があるとするでしょう。世界中を巡業して、名だたる相手を次々に負かしていくの。……でも箱を開けたら、中に人が入っていたのよ。これ、詐欺だと思う? それとも商売だと思う?

ひかり:えっ中に人!? そんなの完全にズルじゃんっ! ……あれっ、でも中の人がチェス強いなら、強いこと自体はほんとうなのか……あれ? あれれっ?

ことね:混乱するわよね。1770年に、ケンペレンという人がオーストリアの女帝に見せるために作った自動人形で、「トルコ人」と呼ばれたの。ナポレオンやベンジャミン・フランクリンも負かしたと言われていて、84年ものあいだヨーロッパとアメリカ大陸を回って、1854年に火事で焼けたわ。……で、この名前をそのまま自社サービスに付けた会社があるのよ。Amazon。2005年に始まった「Mechanical Turk」がそれで、9月30日で終わるの。機械には難しいけれど人間なら一瞬で終わる作業——「この写真に何が写っている?」「この文は皮肉?」みたいなものね——を細切れにして、世界中の人に配る仕組み。依頼ひとつをHIT、Human Intelligence Task、つまり人間知能タスクと呼ぶわ。ベゾスはこれを「人工的な人工知能」と表現したの。ピーク時には50万人以上が登録していたそうよ。

みずき:…中に人が入ってる仕掛けの名前を、中に人が入ってる仕掛けに付けたんだ。開き直りとしては満点。

ひなた:ふぁ〜……ことね先輩。その箱の中の人は、ごはんは食べられたのですか?

ことね:……ひなた、それ、いちばん長いあいだ言われ続けてきた話なの。時給に直すと2ドルを切る案件もあって、しかも依頼した側が「これは不合格」と判断すれば、成果物だけ残して報酬を払わずに済んでしまう、という指摘がずっとあったわ。ただ、Amazonが畳む理由はそこではなさそうなの。会社は「プログラムやサービスを定期的に見直している」としか言っていないけれど、AIの学習データを作る仕事は、いまやScale AIやMercor、Prolificといった専門の会社に移ってしまったのよ。同じ9月30日に、SageMaker Ground Truthも一緒に終わるわ。

ひかり:えっ待って、AIのごはんを作る仕事が、AIの会社に取られちゃったってこと!?

ことね:それだけでもないのよ。2023年にスイスの研究チームが調べたら、文章をまとめる作業をした人のうち33〜46%が、こっそりAIに書かせていたと推定されたの。……論文のタイトルがすごくてね。「Artificial Artificial Artificial Intelligence」。artificialが三つ並ぶのよ。

みずき:…人間のふりをした機械のふりをした人間が、機械を使ってた。三つで足りてるの、それ。

ひなた:ふぁ〜……でも、箱の中の人は、ずっとほんとうに働いていたのですね。

まとめ:機械のふりをした人間の市場が、人間のふりをする機械に押されて閉じる。箱の中の人は、最初からずっと働いていた。

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