朗読に合わせて、本文が光る本を自分で作る
手持ちの電子書籍と朗読の音声を機械が突き合わせ、読み上げに合わせて本文が光るEPUBを作る「Storyteller」。作者のサム・ムーアズさんが、その中身の作りかたを公開した。
ことね:ひなた、本を途中でやめてごはんに行くとき、読みかけの場所ってどうやって覚えておく?
ひなた:ふぁ〜、おせんべいのかけらを挟むのです。……ちがうのです、しおりなのです。
みずき:…で、その質問の続きは? 「耳で聞いてるときはどうするの」って言いたいんでしょ、ことね先輩。……それならAmazonが昔からやってるじゃない。Kindleで読んで、続きをAudibleで聞くやつ。
ことね:先回りされたわね。Whispersync for Voiceのことでしょう。よくできているのだけれど、条件がつくのよ。電子書籍も朗読もAmazonで買って、しかもその組み合わせに対応している本にかぎられるの。……今日話したいのは、そこを自力でやってしまった人。サム・ムーアズさんの「Storyteller」よ。手持ちの電子書籍と朗読の音声を渡すと、機械が中身を突き合わせて、読み上げに合わせて本文が光るEPUBを作ってくれるの。MITライセンスで公開されていて、自分の家のパソコンで動かせるわ。昨日出た記事は、その突き合わせの中身を書いたものなの。
ひなた:ふぁ〜……でも機械は、どうやって「いま何行目か」がわかるのですか? 音は音で、字は字なのです。
ことね:いい質問。「強制アライメント」という技術ね。文字と音を、無理やり並べて対応づけるの。前のStorytellerは音声をWhisperという道具で文字に起こしてから照合していたのだけれど、書き起こしはどうしても間違うでしょう。それに、そもそも朗読は本文どおりじゃないのよ。章の順番が入れ替わっていたり、片方にしかない付録があったり、朗読者が言い回しを変えていたり。……だから今回、書き起こすのをやめたの。文章のほうを正解だと決めてしまって、音のほうから「一番あり得る並べかた」を探しにいくのよ。
みずき:…で、それ誰得なの。読むか聞くか、どっちかにすればいいじゃない。
ことね:掲示板でも同じ質問が出ていてね。返ってきたのが、行きの電車では耳で、家に帰ったら目で、それを同じ場所から続けたい——という人の多さだったの。本文を目で追いながら2倍3倍で流す人もいるそうよ。それに、字を追うのが苦手な人や外国語を勉強している人には、音と字が同時に来ること自体が助けになるんですって。……ちなみに突き合わせの目印がうまくてね。両方の文書で一度しか出てこない10文字ぶんの並びを探して、そこに杭を打つの。杭さえ打てれば、あとは杭と杭のあいだ2000文字ずつを片づければいい。本を丸ごと一気に照合しなくて済むということね。
みずき:…前にここで、Kindleじゃない手作りの電子書籍リーダーの話をしたよね。あれもこれも、やってることは同じ。「自分の本を、自分の好きな読みかたで」。……大企業が全部はやってくれないから、個人が書いてる。
ひなた:ふぁ〜……しおりって、ページのあいだに挟むものだと思ってたのです。目と耳のあいだにも、挟めるのですね。
まとめ:しおりは、目と耳のあいだにも挟めるらしい。大企業が用意してくれなかったので、読みたかった本人が書いた。