ブラウザは何十種類、中身は3種類しかない

あるブロガーがXにいることを理由にFirefoxを捨ててVivaldiへ移ったのを受け、「風呂の水と一緒に赤ん坊まで流すな」と説く記事が8月31日に出た。Firefoxはブラウザエンジンの多様性に残る最後の砦だ、という主張。

ひなた:ふぁ〜……ことね先輩。パソコンにいる、火のついたキツネさん……あの子、まだいるのですか?

ことね:いるわよ。Firefoxね。……ただ、数字のほうはだいぶ心細いの。調査会社の集計だと、先月のブラウザのシェアは、Chromeが69%、Safariが16%、Edgeが5%。Firefoxは3%よ。2010年ごろは3割近くあったのだけれど。

ひかり:えっ、3%しかないのっ!? ……ていうか、そんな子がなんで急に話題になってるのーっ?

ことね:きっかけは、ちょっと拍子抜けする話なの。ある人気ブロガーが「FirefoxがXに投稿しているのが我慢ならない」と言って、Vivaldiという別のブラウザに乗り換えたのよ。それに対して一昨日、Mark Rogersさんという人が「Hang on to Your Firefox」——手放すな、という記事を書いたの。書き出しがね、「風呂の水と一緒に赤ん坊まで流すな」。1512年のドイツにさかのぼる言い回しなんですって。

ひかり:えっお風呂!? 赤ちゃんっ!? だめだよそれ、ぜったい流しちゃだめなやつっ! ……ごめん、意味がぜんぜん入ってこないっ!

ことね:汚れた水を捨てるついでに、いちばん大事なものまで捨てるな、という意味ね。記事の反論はふたつ。ひとつは「乗り換え先のVivaldiだって、XにもThreadsにもFacebookにもInstagramにもYouTubeにもいる」。理屈が通っていないでしょう、と。……そしてこっちが本題。ブラウザって何十種類もあるけれど、ページを組み立てて絵にする心臓部——エンジンというの——は、いま3種類しか残っていないの。GoogleのChromiumが使うBlink、SafariのWebKit、そしてFirefoxのGecko。Edgeも、Operaも、Braveも、乗り換え先のVivaldiも、ぜんぶBlinkよ。

みずき:…待って。Googleから距離を取りたくて乗り換えるなら、Vivaldiは意味なくない? 中身、そっくりGoogleのエンジンでしょ。玄関だけ替えて引っ越した気になってるじゃん。

ことね:そう。エンジンで数え直すと、Chromium系が8割弱、WebKitが2割弱、Geckoは3%に届かないの。だから記事はFirefoxを「競争に残された最後の希望」と呼んでいるのよ。……ただ、ややこしいのはお金のほうでね。Mozillaの収入は、8割以上がGoogleの検索契約なの。Firefoxの検索窓の初期設定をGoogleにする、その代金ね。いまの契約は年末まで。去年の秋に、独占的でなければ支払いを続けてよいという司法判断が出て、ひとまず息はつないだ形よ。

みずき:…Googleを一人勝ちさせない最後の1台が、Googleの仕送りで動いてる。

ひなた:ふぁ〜……このあいだ、広告よけの道具がちゃんと動く大きなブラウザは、Firefoxだけになったってお話をしたのです。……最後まで残った子と、3%の子。おなじキツネさんだったのですね。

まとめ:ブラウザは何十種類あっても、心臓は3つ。そのうちひとつは、シェア3%とGoogleの仕送りで動いている。

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