PS5に落ちたチップが、格安ゲームPCに
PS5用に作られて規格に届かなかったチップを積んだマイニング基板「AMD BC-250」で、Cyberpunk 2077が動く。基板は運がよければ60ドル。ただしBIOS書き換えと放熱板の切開が要る。
ひかり:60ドルっ! ねえ聞いてよっ、1万円しないでゲーミングPCが作れるんだってーっ! ……あっ、でもえっと、いまはもうちょっとするらしいんだけどっ……
みずき:…その記事、題が「60ドルのゲーミングPC」なのに、一文目が「正確には60ドルではない」から始まってるよ。
ことね:正直で好きよ、その出だし。……DevQuasarのCsaba Kecskemetiさんが去年の11月に書いたものでね、それがいま、また掲示板の上のほうに戻ってきたの。話題は「AMD BC-250」という基板。この子、経歴が変わっているのよ。中身はPS5のチップなの。ソニーの基準に届かなかった個体——つまり検品で落ちたぶんね。捨てずに再利用して、暗号通貨を掘るための基板に仕立て直したものなのよ。ASRockが1台に12枚挿したサーバーとして売っていたわ。で、そのマイニングが下火になって、中古が世界中に流れたの。
ひかり:えっ、PS5の落ちこぼれっ!? ……で、それで何ができるのっ?
ことね:ふつうにパソコンになるのよ。見た目はグラフィックボードなのに、これ1枚で完結しているの。CPUはZen 2の6コア12スレッド、GPUはRDNA 2で演算ユニットが24基。PS5は36基だから、そこは絞られているわね。メモリは16GBのGDDR6を、CPUとGPUで一緒に使う方式。メモリを挿す穴は無いの、最初から載っているぶんだけ。あとは映像出力とUSBと有線LANとSSDの差し込み口ね。……記事の人はこれでCyberpunk 2077を動かして計測しているわ。ほかにGTA V、Counter-Strike 2、Hitman 3も遊べる程度には動いたそうよ。掲示板で実際に組んだ人いわく、体感はPS5とだいたい同じくらい、と。……6月にここで話したValveのSteam Machineが1049ドルからだったでしょう。海外の検証記事は「半分の値段で、あれに近い性能が出る」と書いているわ。
みずき:…話がうますぎる。落とし穴、どこ。
ことね:たっぷりあるわ。まずBIOS——機械のいちばん下で動く設定の仕組みね——を非公式の3.00版に入れ替えないと、肝心の設定画面がそもそも開かないの。ただ、入れ替えると眠っていたぶんが起きることがあってね。演算ユニットが24基から40基に、CPUが6コアから8コアに増えたりするの。個体によるから、当たるかどうかは運。有志が「シリコンくじ」と呼んでいるわ。……次に、GPUに割り当てるメモリを512MBまで減らすの。減らすのよ。共有方式だから、そのほうが速くなるのね。それから冷却。サーバー用に密閉された放熱板が付いているから、12センチのファンを当てたければ切り開くの。戻せない改造よ。仕上げにWindowsだと正規の映像ドライバが無いので実質Linux、記事の人はManjaro。ケースは3Dプリンタで自作。
ひかり:えっ待って待って、ことね先輩、切り開くのっ!? のこぎりっ!? ……で、けっきょくいくらになるのー!?
みずき:…掲示板に、ほんとに組んだ人が書いてた。いまは基板だけで150ドル以上、ぜんぶ揃えて300ドルくらい。いちばん高かったのは1テラのSSDだって。あと、何もしてない状態で80ワット食う。うるさいかどうかはファンとケース次第。……「もう一回作るか」の答えが「楽しかったけど、時間を勘定に入れると別にお得ではない」。……60ドルのゲーミングPCって、そういうことね。
ひなた:ふぁ〜……あの。ひなた、給食で余ったパンを持って帰って、次の日に揚げてもらうのです。……このチップさんも、そんな感じなのです。
まとめ:60ドルで買えるはずの基板は、遊べる箱になるまでに300ドルかかる。……それでもSteam Machineの3分の1以下ではある。