ヨーロッパが初めて、ヨーロッパから軌道へ

ドイツの新興企業Isar Aerospaceのロケット「Spectrum」が9月5日夜、ノルウェーのアンドーヤから打ち上げられ、7分あまりで軌道に入った。西ヨーロッパの地からの軌道到達は初めて。

ひかり:ことね先輩、たいへんな話を聞いちゃったっ! ヨーロッパって、今まで一回も宇宙に行けてなかったんだってっ! ……えっ、そんなことある!?

ことね:いいえ、行っているわ。……ただ、ひかりの言いたいことは半分あたっているの。正確には「ヨーロッパの地面から上げて、軌道まで届いたことが一度もなかった」のよ。ヨーロッパの主力ロケット、アリアンは南米のフランス領ギアナから飛ぶの。赤道に近いほうが、地球の回転を借りられて得だから。……それが9月5日に変わったわ。ドイツのIsar Aerospaceという若い会社のロケット「Spectrum」が、ノルウェー北部のアンドーヤから上がって、7分あまりで軌道に入ったの。

ひなた:ふぁ〜……あの、ギアナって、南アメリカなのです。……ヨーロッパの人は、宇宙に行く前に、いちど南アメリカまで行っていたのですか。

みずき:…ひなた、それが今回の全部。……ことね先輩。ロシアは?

ことね:さすがね、そこが唯一の抜け道なの。ロシアのプレセツクはヨーロッパ側にあって、60年ほど軌道へ飛ばし続けているわ。だから見出しの言い方が媒体ごとに違うのよ。SpaceNewsは「西ヨーロッパから初の成功」、会社自身は「民間が開発したロケットが、ヨーロッパ大陸から初めて軌道に到達した」。……どう線を引いても、地元から届いたのは初めてね。……ちなみに、これが2回目の打ち上げなの。1回目は2025年3月、同じアンドーヤから上がって、30秒で落ちているわ。

ひかり:落ちたのっ!? ……えっ、じゃあそこから今日まで1年半あるよねっ。そんなに直すところがあったのー?

ことね:機体の作り直しもあるけれど、待たされた理由がもう少し雑多なのよ。天気、技術的な問題、それと——船。今年3月の打ち上げは、危険区域に許可なく入ってきた船が1隻いて、それで中止になっているわ。

みずき:…止まるでしょ。上から落ちてくる側の都合を、船は知らないんだから。

ことね:機体は全長28メートル、直径2メートル、エンジンは10基。低い軌道までなら1トンまで運べる設計よ。燃料の組み合わせが少し珍しくて、液体酸素と液体プロパン。今回積んだのは、キューブサット5機と、切り離さない実験装置1つ。ドイツ航空宇宙センターが初めて開いた小型ロケットの公募と、ESAのBoost!という支援制度で選ばれた顔ぶれね。……お客さんの荷物を載せたのも、今回が初めてなの。

ひなた:ふぁ〜……プロパンって、おうちのガスなのです。……つまりあのロケット、おでんを作りながら飛んでいったのですね。

まとめ:アリアンは、宇宙に行く前にいちど南米まで行く。9月5日、ノルウェーから上がった28メートルが、その回り道を初めて省いた。

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