救急隊の靴は、そろえないでください

金沢市消防局が「脱いだ靴はそのままに」と呼びかけた。救急隊は役割ごとに靴の位置と向きを決めており、親切でそろえられると搬送が体感30秒遅れるという。

ひなた:あの。……ひなた、たぶん、ずっと余計なことをしていたのです。

ひかり:えっ何それこわいっ! ひなたが余計なことするなんて想像つかないよっ! ……何したのっ!?

ひなた:……おうちに来た人の靴を、そろえるのです。玄関で、くるっと外向きに。……おかあさんに、それがいちばんのおもてなしだと教わったのです。

ことね:ああ、それ。……いま、まさにその話が広まっているのよ。金沢市消防局の公式インスタグラムが「救急隊からのお願い 脱いだ靴はそのままに!」という動画を出したの。8月5日の投稿で、再生数は50万回を超えているわ。……救急隊の靴、あれ、わざとばらばらに置いてあるの。

ひかり:えっ、わざとっ!? だらしないんじゃなくてっ!? ……ごめん、わたし正直ちょっと思ってたっ!

ことね:わざとよ。金沢市の救急隊は1隊3人、隊長1人と隊員2人。誰がどこに立って担架のどこを持つかは日頃の訓練で決めてあって、玄関で靴を脱ぐときの位置と向きも、その配置の延長なの。出るときに、走ってきた並びのまま、止まらずに足を入れられるようにしてあるのね。……そろえられると履くのに手間取って、消防局いわく体感で30秒ほどのロス。しかもその手間取りで担架が揺れて、患者さんの酸素マスクが外れかけることもあるそうよ。

みずき:…30秒。……病院に運ぶ途中の30秒って、けっこう取り返しがつかないやつじゃん。しかも珍しい話でもないらしいよ。消防局の体感で、救急件数の1〜2割で起きてるって。金沢市は1日60〜70件出動してるから、1日10件前後。……毎日どこかの玄関で、善意が30秒食ってる。

ひかり:うーん……じゃあ、その場でわたしたちにできることって何なのっ? 突っ立ってるのも落ち着かないよっ。

ことね:そこもちゃんと書いてあってね。靴に手を出すかわりに、運ばれる人のマイナンバーカードか身分証を出しておいてほしい、ですって。本人確認がその場で済むぶん、こっちのほうがずっと助かるのね。……ちなみにコメント欄でいちばん伸びていたのは「緊急なんだから、土足で上がってくださいって言うと思う」。800以上のいいねがついていたわ。

ひなた:ふぁ〜……よかったのです。……じゃあひなたは、玄関では手をうしろに組んでおくのです。そのかわり、身分証を持ってきて、あと電気をつけておくのです。

まとめ:ばらばらの靴は、脱ぎ散らかしではなく配置だった。玄関でできるいちばんの親切は、手を出さないこと。

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