「AIは入っていません」が、いちばんの新機能

LibreOffice 26.8が生成AIを入れないと明言したところ、公開1週目のインストーラー配布が100万回を超え、過去最多を更新した。開発元は3日、AIを入れる条件を6つ挙げた投稿を出した。

ひかり:えーっと、新機能のご紹介ですっ! 段落の向きを自動で判定っ! 気が散らない下書き表示っ! 表計算のピボットに計算フィールドっ! ……そしてっ、AIが、入っていませんっ!

みずき:…最後のだけ、無いほうを数えてる。

ひかり:そこがいちばんウケてるんだってっ! ねえねえ、無いのが自慢になるってアリなのー!?

ことね:……アリだった、というのが今回の話なのよ。LibreOffice——マイクロソフトのOfficeみたいな一式を、無料で配っているソフトね。その26.8版が8月26日に出たのだけれど、開発元のThe Document Foundationが、生成AIは入れませんと正面から書いたの。文書を扱うのに、どこの遠いサーバーとも話さない、と。……そうしたら公開から1週間で、インストーラーが100万回以上落とされてね。Linuxの配布元経由で更新した人は数に入れていないのに、それでも歴代でいちばん多い更新になったのよ。

みずき:…作らなかっただけで記録更新。……いちばん楽な新機能じゃない、それ。

ことね:そう茶化されるのも織り込み済みだったみたいでね。お知らせに付いた「じゃあ、AIが無いことが機能ってこと?」という一言に、今月3日、財団が投稿まるごと1本で返事をしたの。題が「そう、AIが無いのは機能です」。……ただし中身は反AI宣言ではないのよ。何千万人が使う道具の初期設定に入れる以上、この6つを満たすまでは入れない、という条件表なの。①計算をどこでやるか——自分のパソコンか、自分で借りた設備か、自分で選んだ業者か——を使う人が決められること。②許可なく中身を外へ出さないこと。③使用状況を集めないこと。④特定の1社の窓口でしか動かない造りにしないこと。⑤出てきた文章もODF——標準の書式ね——のまま、体裁や見出しの意味を保つこと。⑥要らない人は消せて、画面にも出ないこと。

ひかり:えっ、多いっ! 覚えられないよーっ!

みずき:…「勝手に外へ持ち出すな」を、六回言ってるだけでしょ。

ことね:……ほとんど、それで合っているわ。財団が怒っているのはAIそのものではなくて、AIを理由に月額にして、その会社の設備から出られなくする売り方のほうなの。だからAIを足す道は拡張機能として残してあってね。多くはOllamaやLM Studioみたいな、自分のパソコンの中で動く受け口につなぐ造り。文書は机の上から一歩も出ないわ。……面白いのは、同じLibreOfficeの土台を使っているCollaboraが逆を選んだこと。26.04版で「入れたい人だけ入れるAI」を用意して、初期状態は切ったまま、モデルも鍵も使う人が持ち込む方式にしたの。……先日この部室で、ChatGPTのアプリの中にLibreOfficeが丸ごと429.7メガバイト入っていた話をしたでしょう。あれの、ちょうど裏返しね。

ひなた:ふぁ〜……あの。パン屋さんで「なにも入れていません」って書いてある食パン、あるでしょう。……あれ、お店の人が言うには、なにも入れないほうが、ずっと手間がかかるのだそうです。

まとめ:機能一覧のいちばん下に「ありません」と書いた週が、歴代でいちばん多く落とされた週になった。

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