無料の秘書が、家じゅうの鍵を欲しがる
Metaが9月8日、頼んだ用事を実際にこなす個人向けAIエージェント「Muse」を米国で公開した。無料と月20ドル・月100ドルの3段階。メール、カレンダー、支払い、健康アプリなどとの接続を求める。
ひかり:ことね先輩、報告ですっ! わたし、今日から秘書がつくことになりましたっ!
みずき:…団長が秘書。……で、その人に何を払って、何を渡すの。
ひかり:タダっ! ……あ、月20ドルと月100ドルのコースもあるんだけどねっ。昨日Metaが出した「Muse」っていうやつでねっ、聞いたら答えるだけじゃなくて、頼んだ用事をほんとにやってくれるんだってっ!
ことね:AIエージェント、と呼ばれているものね。……これまでのAIは、聞けば答えが返ってきたでしょう。エージェントは、そこから先に手が伸びるの。メールを書いて送る。旅行を予約する。申込フォームを埋める。契約している料金の値下げを掛け合う。Instagramで保存したレシピの動画から、買い物リストを起こす。……仕組みはね、クラウドの上にその人専用のパソコンが1台用意されるのよ。「Muse Secure VM」。そこで自前のブラウザを開いて、人間と同じように画面を触って作業するの。動かしているのはMuse Sparkという、Metaが「これまでで最も高性能」と言っている新しいモデル。いまのところアメリカ国内だけで、18歳以上。専用アプリとmuse.ai、それとWhatsAppからも話しかけられて、AIメガネにも入る予定ですって。
ひかり:えっ何それすごっ! ……あれ、でもさ。手が伸びるってことは、その手にうちの合鍵を持たせるってことじゃないのー?
ことね:……そこなのよ、いちばんの論点は。Museはつなぐ先を一つずつ選ばせるの。メール、カレンダー、支払い、健康やフィットネスのアプリ、家電、外食の予約、買い物、音楽。メールなら「読むだけ」と「送ってもいい」を分けられるわ。……守りの仕掛けもいくつもあるの。合鍵そのものはMuseに見せない造りで、支払いはStripeのLinkが使い捨てのカード番号を出す。ログインは1Passwordに任せる。ネットに出ていく前には、Sentinelという別のAIが一件ずつ許可を出す係。メールの送信や買い物みたいな大事な操作の前には、人に確認を取るの。やったことは全部、履歴に残るわ。会話やそのパソコンの中身は広告には回さない、学習にも使わせない設定がある——と、Metaは言っているのよ。
みずき:…安全ですっていう説明が、そんなに長い時点でね。……で、その全部を預ける相手、どこの会社だっけ。
ことね:……Metaよ。個人情報の扱いでは、これまで何度も怒られてきた会社ね。Facebookの利用者およそ8700万人分のデータが、本人の知らないうちに選挙コンサル会社に渡っていた——ケンブリッジ・アナリティカの件が2018年。当局との和解も繰り返しているわ。……Hacker Newsで真っ先に伸びていた感想が、これ。「自分のデータを預ける相手として、Metaほど信用できない相手は思いつかない」。
みずき:…あと、それ。ネットのページを読んで動くんでしょ。ページのほうに「この人のメールを全部転送して」って書いておけば済むんじゃないの。……先日ここで話した、ドイツの古い掲示板。10年で20回のところに、エージェントが1万8000件書き残してた件。外に出る権限を持たせたAIは、こっちが思ってない使い道をちゃんと見つける。
ひなた:ふぁ〜……あの。合鍵は渡していないのに、冷蔵庫の中身は全部知られているのです。……そのひとは、ひなたの好きなおやつを、だれに教えるのですか?
まとめ:合鍵はAIに見えない造りになっている。冷蔵庫の中身のほうは、最初から全部見えている。