CSSの定番、無料版が残って有料版が閉じた

Web制作で定番のCSSツール「Tailwind CSS」を作るTailwind Labsが、Shopifyに買収された。本体は無料・MITライセンスのまま維持され、開発費を稼いでいた有料製品のほうが新規受付を止める。

ひかり:ことね先輩ーっ、大変ですっ! ネットのみんなが「テイルウィンドが死んだ」って言ってるんですっ! ……あっ、でもわたし、テイルウィンドが誰なのか知らないので、悲しんでいいのかどうかも分からないんですっ!

ことね:まあ落ち着いて。順番に整理しましょう。……まず、死んでいないわ。むしろ逆で、これから先も続くことが決まった話よ。Tailwind CSSっていうのは、Webページの見た目を作る道具ね。ふつうCSSは「この部品はこの色でこの余白」と別のファイルに書くのだけど、Tailwindは「bg-blue-500」みたいな短い合言葉をHTMLに直接並べていくの。慣れると速いし、部品にいちいち名前を考えなくていいのが楽なのよ。週に1億1000万回以上インストールされていて、去年のState of CSS調査では回答者の51%が使っていた、いちばん人気のCSSフレームワークだわ。

ひかり:そんなに使われてるんですかっ!? じゃあ何がどうなったんですかっ?

ことね:作っているTailwind Labs——カナダのオタワにある会社ね——が昨日、Shopifyに買収されると発表したのよ。ネットショップを開く仕組みを貸している、あのShopifyね。創業者のアダム・ワサンさんが自分のブログで書いていて、金額は公表なし。Tailwind CSS本体はこれまでどおりMITライセンスのオープンソースで、チームもそのまま面倒を見続けるそうよ。……ただ、その開発費を稼いでいた有料のほう——Tailwind Plusとui.shね——は、その日から新規の受付をやめたわ。すでに買った人は、そのまま使い続けられるけれど。

みずき:…順番が逆じゃない? ふつう買われたら、タダのほうが有料になるでしょ。

ことね:そこが今回いちばん語られている点なの。あの会社、道具そのものはずっと無料で配って、それに合うデザイン済みの部品や雛形を売って食べていたのよ。……そして、お客さんがどこから来ていたかというと、Tailwindの公式ドキュメント。使い方を調べに来た人が、ついでに雛形も買っていく流れね。その入口のほうが、先に消えたの。いまのAIはTailwindの合言葉をだいたい正しく書けるから、わざわざ調べに行かなくていい。検索してもAIの要約が先に答えを出すから、やっぱり行かない。ワサンさんは売上がほぼ8割減ったと言っていて、原因をAIの「brutal impact」——容赦のない打撃、と表現しているわ。今年1月には、エンジニアリングチームの75%にあたる3人を手放しているの。

ひかり:えっ、待って待ってっ、それって……AIが親切に教えてくれるようになったせいで、教えてた人のところに誰も来なくなったってことですかっ!?

ことね:道具が嫌われたのではなくて、道具の説明書が読まれなくなった、ということね。……買ったShopifyのほうの狙いも、発表文に書いてあるわ。お店の見た目を作るところ、レジ、注文の追跡、Shopアプリでの商品探し。そこにもうひとつ、「エージェント型のコマース」と。人の代わりにAIが買い物をする時代の画面を、先に用意しておきたいそうよ。

みずき:……AIに売り場への道を消された人たちが、AIに買い物させたい会社に拾われたんだ。

ひなた:ふぁ〜……テイルウィンド。追い風、っていうお名前なのですね。……あの。うしろから風が吹いていると、乗っている本人には、風がぜんぜん吹いていないみたいに感じるって、聞いたことがあるのです。

まとめ:AIに売り場への道を消されたチームが、こんどはAIが買い物をする売り場をつくる。

元記事を読む / ホームへ