アフリカはグリーンランドの14倍。でも地図は変わらない

国連総会が今月はじめ、面積のゆがみが小さいEqual Earth図法を勧める決議を164対1で採択した。ただし拘束力はなく、地図アプリがメルカトル図法をやめる見込みは薄い。

ひかり:はいっ、抜き打ちクイズですっ! グリーンランドとアフリカ大陸、広いのはどっちでしょーかっ!

みずき:…そのわざとらしい聞き方の時点で、答えアフリカでしょ。

ひかり:うっ……正解っ! しかも14倍っ! ……えーっ、教室に貼ってある地図だと、同じくらいの大きさに見えるのにーっ!

ことね:そこが長く議論になってきたところなのよ。学校や報道でよく使われる世界地図——メルカトル図法ね——は、1569年にゲラルドゥス・メルカトルが作ったものなの。目的は航海だったわ。この地図の上でまっすぐ線を引くと、その線がずっと同じ方角を指すように作られているの。船乗りは羅針盤をその角度に固定したまま進めばよかったのね。……代わりに差し出したのが面積で、赤道から離れるほど大きく描かれてしまう。グリーンランドがふくらんでアフリカと肩を並べるのは、そのせいよ。

みずき:…ことね先輩。で、その400年以上前の地図に、いま誰が文句つけたの。

ことね:国連総会よ。今月はじめ、「Correct the Map(地図を正す)」という決議を採択したの。トーゴがアフリカ諸国を代表して出した案で、アフリカ連合が後押ししてきた運動が土台ね。中身は、政府・学校・報道機関・国際機関、それに技術系の企業に向けて、「大きさが問題になる場面では、面積のゆがまない図法を使ってください」と促すもの。名前が挙がっているのがEqual Earth——2018年に3人の地図製作者が作った、比較的新しい図法よ。採決は164対1。反対したのはアメリカ1か国だけで、棄権が6か国だったわ。

ひかり:えっ、じゃあ明日からスマホの地図もそれになるのっ!?

ことね:そこが今日いちばん面白いところなの。まず、この決議に法的な拘束力はないわ。メルカトル図法を禁じてもいないし、決議じたい「航海と航空にはいまも完全に適している」と認めているの。……そして地図アプリのほうも、乗り換えるとは考えにくいと見られているのよ。理由は角度。メルカトルは面積を犠牲にする代わりに、狭い範囲の角度をほとんどそのまま残すの。だから直角に交わる交差点は画面でも直角に見えるし、左折の案内が左折の形に見える。Equal Earthは逆で、面積を守る代わりに形と角度がゆがむわ。世界地図としては正しくても、曲がり角の絵にすると使いものにならないの。……ただGoogleマップは、パソコンの画面で引きにすると2018年からもう平らな地図をやめていて、丸い地球儀になっているのよ。設定で戻すこともできるし、スマホのアプリのほうはいまも平らなままね。

みずき:…世界の正しさと、次の交差点の正しさは、別の道具で測るってこと。

ひなた:ふぁ〜……あの。ひなた、みかんの皮をやぶらずにむいて、机に広げてみたことがあるのです。……あれ、どうやっても平らにならないのです。どこかを伸ばすと、かならずどこかが破れるのです。

まとめ:面積を正しくすると、曲がり角がゆがむ。地図アプリが選んだのは、世界の大きさではなく次の交差点のほうだった。

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