設定画面の作り直しに、日本のトイレの名前がついた
メールソフト「Thunderbird」の開発チームが、250を超える設定の文章から専門用語を消す作業を報告した。社内での呼び名は、日本のハイテクトイレにちなんだ「Project Toto」。
みずき:…ことね先輩。これ、日本のトイレ、褒められてるの? いじられてるの?
ことね:……褒めているほうね。Thunderbirdという、Firefoxと同じMozilla系の無料メールソフトがあるの。その開発チームが今週、設定画面の作り直しについてブログを出したのだけれど、最後にこう書いてあるのよ。「設定の作り直しは、いつも華やかな仕事とは限らない。だからチームは社内でこの取り組みを、日本のハイテクトイレにちなんで『Project Toto』と呼んでいる。設定は、たいていの人ができれば考えたくないもの。でも丁寧に設計すれば、つなぎ目がなく直感的で、驚くほど心地よい体験になる」。……日本のトイレメーカーと同じ名前だけれど、社名までは書いていないわ。
ひかり:えっ何それ、トイレの名前っ!? ……でもわかるかもっ! 設定画面って呪文みたいなんだもんっ! 押したら何が起きるのか、押してみるまでわかんないやつっ!
ことね:まさにそこを直す話なの。設定まわりの文章は250かたまり以上。前回の調査は詳しい人たちに寄っていたから、今回はわざと使い始めたばかりの人に絞ったそうよ。アプリの中の文字を全部書き出して、正しいか、古くなっていないか、それから「8年生が読めるか」を1つずつ確かめたの。アメリカの8年生は、日本の中学2年生ね。……前と後の画面も載っているわ。前は「一般」の中に「受信メール」があって、「アプリアイコンの設定を変更する」。音の欄には「file:///Users/」で始まるファイルの置き場所が、そのまま並んでいたの。後のほうは左の一覧に「通知」ができて、「新しいメールのお知らせを表示」のスイッチ。「作成」という項目名も、「メールを書く」になったのよ。
ひなた:ふぁ〜……中学2年生が読めるなら、中学3年生のひなたは、ばっちり読めるのです。
みずき:…先週スマホの文字をでっかくして、戻し方がわからなくて、3日そのままだった人がいたね。
ことね:だからこその調査なのよ。試作した「通知」「外観」「作成」の3つで、何のための項目かわかった人は86%、86%、100%。目標の80%を超えたわ。人に聞いたり、説明書を読んだり、AIに頼ったりせずに自分で変えられそうか、という自信も5点満点で4点以上。……ただ、「こういう場面ならどれを選ぶ?」という問題だと、通知だけ71%で届いていないの。ブログも完璧はめざさず少しずつ、と書いていて、次の宿題に、チェックボックスとオンオフのスイッチの使い分けや、「Autosave 5 seconds」みたいなぎこちない言い回しを挙げているわ。
ひかり:あれっ、でもさっ。日本のトイレのボタンって、外国から来た人がいちばん困るやつって、聞いたことあるんだけどっ……?
ことね:よく知っているわね。ブログはそこまで触れていないけれど、日本のトイレも一度、同じ作り直しをしているの。2017年の1月、日本レストルーム工業会が、メーカーごとにばらばらだった操作パネルの絵記号を8種類にそろえたのよ。訪日客に日本のトイレで困ったことを聞いたら、高機能な温水洗浄便座の使い方がわからない、が上位を占めていたから。「便ふた開閉」「おしり洗浄」「乾燥」「止」……。翌年にはそのうち6種類が、ISOの国際規格に登録されたわ。つまり「押すまで何が起きるかわからない」は、トイレのほうが先に通った道なのよ。
ひなた:ふぁ〜……いいおトイレは、出たあとに、どのボタンを押したか覚えていないのです。……ひなたは、スマホの文字の戻し方も、まだ覚えていないのですけど。
まとめ:「考えたくないものほど、丁寧に作る」。そのお手本として名前を借りたのが、日本のトイレだった。