広告で来た21台のうち、20台は0秒で帰った

小さなパズルアプリの開発者が、Google広告に220ドルを使った結果を公開した。2週間で請求されたインストール56件のうち33件は、1回開いて0秒で去る同じ動きで、ボットファームの仕業とみている。

みずき:…ひかり。その「広告を出す」ボタン、押す前にこれ読んで。来るのが人とは限らないから。

ひかり:えっ、なんでバレてるのっ!? きになる団の団員募集、お年玉の残りをぜんぶ広告にすれば、100人くらい来てくれると思ったのにーっ! ……ていうか、人じゃなかったら何が来るのっ!?

ことね:それを数字で見せてくれた人がいるの。Dayzleという、1日5問の小さなパズルアプリを作っている開発者さん。2週間前、Android向けにGoogle広告を始めたの。予算は1日40カナダドル、目標は「インストール数」。はじめは「1件1.5ドルまで」と上限をつけていたら、その値段で入れてくれる人が見つからなくて、お金はほとんど減らなかった。試しに上限を外したら、その日のうちに予算の倍の80カナダドルを使って、「21件インストールされました」と報告が来たの。……倍を使うのは、ルール違反ではないのよ。Googleの広告は、見込みのある日は1日の予算の2倍まで使っていい決まりで、月の合計で帳尻を合わせるの。……それで喜んで自分のアプリの管理画面を開いたら、そっちの数字は、1。

ひかり:えーっ、21件って言われて、ほんとは1件っ!? じゃあ、のこりの20件は、どこのだれが入れたのーっ!?

ことね:管理画面が数えそこねたのは、古い版のアプリがインストール日を送らないせいだったの。生のデータを見ると、その日の新しいAndroid端末は、ちゃんと21台あった。ただ、そのうち20台が動かしていたのは、Playストアが何日も前に配るのをやめた古い版。ストアではもう手に入らないのに、20台とも「Google Playから入れた」と名乗っていた。どれもアプリを1回だけ開いて、どの画面にもいた時間は0秒。そして二度と来なかった。……2週間の合計だと、請求されたインストールは56件。うち33件がこの動きで、7件は広告を出していない国から。人間らしいのは13人。作者は、スマホをずらりと並べて機械で動かす「ボットファーム」だとみているわ。……手口はこう。広告の中でいちばん短い動画を、クリックはせずに見る。そして、ストアからではなく、保存してあったアプリのファイルから入れる。そのほうが速いし、ストアに気づかれにくいから。Googleは「広告を見たあとにインストール」を成果に数えるから、ファームが入れれば入れるほど、この広告は“効いている”ように見える。するとGoogleの仕組みは、もっと広告をファームのほうへ回す。作者いわく、広告費が無駄になることが約束されたループね。

みずき:…いちばん短い動画を選んで見るの、せこい。……で、それ誰得? お金を払ったのは作った人で、受け取ったのはGoogle。ロボットの持ち主は、何をもらってんの。

ことね:正確には、どっちも記事にははっきり書いていないの。ただGoogleの説明だと、スキップできる動画広告は10秒以上、それより短い動画なら最後まで見て、そのあと入れれば成果に数える決まりがあるのよ。短い動画なら、早くその条件を満たせる。筋は通るわね。稼ぎ方のほうも、一般には「インストール1件いくら」で払われるお金を、にせのインストールで受け取る手口だと説明されているけれど、このファームがそうかまでは分からないわ。……それで作者は、Googleに不正なアクセスの申し立てを出して、返金の返事待ち。広告の目標も「アプリを開いた」から「パズルをクリアした」に変えたの。スクリプトにアプリを開かせるのは簡単でも、数独を解かせるのは手間がかかる。ほかのアプリより“ファームしにくい”相手になれればいい、って。……ちなみに本物の13人は、2週間で合わせて92回もパズルをクリアしていたそうよ。

ひなた:ふぁ〜……ひなたは数独を開くと、いつも3マス目くらいで、すやすやなのです。……クリアしないと数えてもらえないなら、ひなたも、ロボットさんといっしょに「いない人」になってしまうのです。

みずき:…大丈夫。ロボットは0秒で帰る。ひなたは画面の前で寝たまま3時間いる。……広告の人は、それはそれで困るけど。

ひかり:よーしっ、決めたっ! きになる団の入団条件は「部室でおやつを1個食べること」っ! これならロボットには、ぜったいまねできないよっ!

まとめ:Googleの「21件」は、ちゃんと本物の数字。ただし、21人ぶんの数字ではない。

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