五大湖のチョウザメ、大坂の陣のころから泳いでいるかも
五大湖のチョウザメの一部は400年以上生きるかもしれない、とする研究をカナダのCBCが報じた。これまでの推定は150年ほど。99%が失われた魚を取り戻す計画も、見直しを迫られている。
ひなた:ふぁ〜……お誕生日ケーキに、ろうそくを400本立てたら、ケーキが見えなくなってしまうのです。……それに、ぜんぶに火をつけおわるころには、最初の1本が燃えつきているのです。
ひかり:えっ何それっ! 400本って、誰のお誕生日なのっ!? ……ひなたちゃんのスマホ、見せて見せてっ。……えっ、魚ぁっ!? 「五大湖のチョウザメは400歳かもしれない」って書いてあるーっ!
ことね:正確には、「400年以上生きる個体がいるかもしれない」ね。先週、カナダの公共放送CBCが大きく取り上げていたの。北米の五大湖にすむ「レイクスタージョン」というチョウザメで、1億5000万年以上前から続く古い系統の魚よ。大きいものは長さ2メートル、重さ180キロにもなるわ。これまでは、長生きしても150年くらいと考えられていたの。記事には、いま湖を泳いでいる中には、フランスの探検家シャンプランが初めてヒューロン湖にたどり着いたころから生きている子がいるかもしれない、とあったわ。それが1615年。日本でいうと、大坂夏の陣の年ね。
みずき:…待って。400年ずっと見てた人、いないでしょ。なんで分かるの。
ことね:そこが、この研究の工夫なの。これまでは、ヒレの骨を輪切りにして、木の年輪みたいな1年ごとの輪を数えていたのよ。でも、年をとるほど成長がゆっくりになって、輪と輪の間がつまって見分けにくくなる。そこでミシガン州天然資源局のエド・ベイカーさんたちは、44年ぶんの「捕まえて、測って、放して、また捕まえた」記録を使ったの。同じ魚が次に捕まるまでに何センチ伸びたかを出して、大人の大きさになるまでに何年かかるかを計算したわけ。たとえば、1990年に117センチだったオスは、34年後にまた捕まったとき、7センチしか伸びていなかった。1年に2ミリちょっとね。春に専門誌に出た論文では、推定された寿命はオスで90〜279年、メスで99〜427年。ベイカーさん自身、「まったく予想外の結果。でも、データがそれを裏づけているのは確か」と話しているわ。
ひなた:ふぁ〜……34年で7センチなのです。ひなたは、この1年だけで4センチ伸びたのです。……背くらべなら、ひなたの圧勝なのです。
ひかり:400歳のおじいちゃんが、いまも元気に泳いでるなんて、すごいじゃんっ! 長生きってことは、いいニュースだよねっ? ……あれ? でも見出しの後ろのほう、「救い方を考え直している」って書いてある……?
ことね:そこが本題なの。五大湖のチョウザメは、昔は網を破る厄介者あつかいで、1800年代には、とっては積み上げて捨てられたり、蒸気船の燃料として燃やされたりしていたのよ。そのうち卵がキャビアとして売れると分かって、今度は乱獲。エリー湖では1885年に2000トン以上とれていたのが、1900年代のはじめには99%以上減ったわ。産卵場所も壊されて、全体では、かつての数の99%が失われたと推定されているの。しかもメスが卵を産めるようになるまで20年以上かかることもあって、そのあとも産むのは数年に1回。だから1世紀以上たったいまも、場所によっては、人が稚魚を育てて放さないと数が戻らない。カナダの回復計画は、始めた人たちより長く続く前提の、100年がかりのものなの。ウィンザー大学のトレバー・ピッチャーさんは「すべてが変わる」と言っているわ。200年から400年生きるなら、保全のやり方そのものを組み立て直さないといけない、って。
みずき:…記事の最後も読んだ? 先住民アニシナベの長老。チョウザメは長生きだから、昔から“おじいちゃんの魚”、魚の長老って呼ばれてきたんだって。400年の話を聞いたら、笑って「知ってた」。……科学、44年ぶんのデータで、やっと追いついた。
ひなた:ふぁ〜……でも、いちばん長生きかもしれないのは、おじいちゃんじゃなくて、427歳のおばあちゃんのほうなのです。卵を産むのも、おばあちゃんなのです。……ひなたは、キャビアをまだ一度も食べたことがないのですけど、このまま、食べたことがないままで、いいのです。
まとめ:400年生きるかもしれない魚を、人間はあっという間に99%減らした。取り戻す計画は、始めた人の一生より長い。