鳥取砂丘にピラミッドを建てる。書いたのは本物の考古学者
駒澤大学教授の考古学者・大城道則が、鳥取砂丘にクフ王の大ピラミッドを再現しようとする小説を出した。12日に出たインタビューでは「圧政や強制労働では造れない」と語っている。
ひかり:決めたっ! 今年の文化祭、きになる団は校庭にピラミッドを建てますっ! 見てこの本、『現代にピラミッドを建設しようとしたら、超大変だった話』っ! ……題名の後半は、見なかったことにするっ!
ことね:ひかり、その後半がいちばん大事なところよ。……でも、いい本を持ってきたわね。書いたのは駒澤大学教授で、現役の考古学者の大城道則さん。新書の見た目をしているけれど、中身は小説なの。主人公は鳥取県庁の新人職員で、県の再生計画として、クフ王の大ピラミッドを鳥取砂丘に再現しようとする話よ。きょう出たインタビューによると、「日本で最もピラミッドが似合う場所」を考えたら、鳥取砂丘一択だったんですって。
ひなた:ふぁ〜……砂丘なら、砂はもう用意してあるのです。型に詰めて、ぽんってひっくり返すだけなのです。
ことね:ふふ、砂のお城ね。ちなみに大城さんに言わせると、「ピラミッドは砂漠の真ん中にある」というのは誤解で、実際はカイロの街のすぐ近くなの。砂漠と砂丘も似て非なるもの。それでも、みんなが思い浮かべる「砂地」のイメージを活かしたかったそうよ。……それにね、ひなたの「型に詰める」は、いい線いっているの。ギザの三大ピラミッドから500年ほどあとに造られた100メートル級のピラミッドは、中身が日干しレンガ——泥を型にはめて乾かしたものなのよ。表面にだけ、きれいな化粧石を張るの。教科書では「王が貧乏になって、石で造れなくなった」と説明されがちだけれど、大城さんは、同じ形の材料を速く大量に作れる「進化」で「合理化」だと見ているわ。石造りからプレハブや鉄筋コンクリートに移るようなもの、ですって。
ひかり:泥のレンガならいけるじゃんっ! 部室の裏、雨のあと泥だらけだしっ! ……ねえことね先輩、ほんとに今つくったら、いくらかかるんですかっ?
ことね:本気で見積もった会社があるのよ。1978年に大林組が、クフ王の大ピラミッドを当時の最新の工法で建てる計画を試算していて、工期は5年、総工費は1250億円。作中にもこの話が出てくるわ。でも、それから半世紀近くたって、測量もデジタル技術も大きく変わったでしょう。いまの技術と組織の組み方でやり直したらどうなるか、が大城さんの挑戦なの。作中の計算式や3Dデータは、研究仲間の関西大学・林武文先生が本気で割り出したそうよ。
ひなた:ふぁ〜……1250億円なのです。……ひなた、昔の人は、ムチでたたかれて、ごはんも少なくて、泣きながら石を運んでいたのだと思っていたのです。
ことね:大城さんは、そこをはっきり否定しているの。「間違いなく、圧政や強制労働であれだけの巨大建造物を造ることは不可能です」。現場の隣には大きな「労働者の町」があって、発掘すると、大量の牛肉や高級な食べ物の跡、手厚い医療の跡が出てくるのよ。働いていたのは奴隷ではなく、国家レベルのエリート技術者の集団。ファラオは神の化身だから、王のそばで聖なる工事に加わることは、来世でも王と一緒に豊かな世界へ行ける、ということでもあったの。巨大な工事を最後までやり遂げさせたのは、ムチではなく「自分たちの意思で造りたい」という誇りだった、というわけね。
ひなた:ふぁ〜……牛肉が出るなら、ひなたも毎日、石を運ぶのです。……ひかり先輩、文化祭のピラミッドは、まず「労働者の町」から建てるのがいいのです。食堂つきで。
まとめ:ピラミッドを積み上げたのは、ムチではなく牛肉と誇りだった。鳥取砂丘に建てるなら、まず要るのは「労働者の町」らしい。