A24がSCPを映画化。財団「聞いてないし、独占もできません」
A24が、ネット発の共同創作ホラー「SCP財団」を題材にした映画を2027年に公開する。財団側は相談を受けておらず、作品はCC BY-SAなので独占はできない、と声明を出した。
ひなた:……まばたき、しちゃだめなのです。目をつぶったら、美術室の石膏像さんが、ひなたのすぐうしろまで来てしまうのです。……ふぁ、ふぁ〜……くちゅんっ!
ひかり:ぎゃーっ! いま目つぶったよねっ!? ……って、美術室の石膏像は動かないからっ! それ、ことね先輩が話してた「見てないあいだに動く像」でしょ? そのSCPが、映画になるんだって! 『バックルームズ』を大ヒットさせたA24が、ホラーのシリーズ『V/H/S』の新作として、2027年に映画館で公開するのっ! ……なのに、SCPのWikiの人たちが「何も聞いてない」って声明を出してるの!
ことね:まあ落ち着いて。SCP財団は、ふしぎで危ないものを「確保、収容、保護」する秘密組織——という設定で、その報告書の形をとった共同創作なの。4chanのオカルト板に書かれた1本から始まって、いまはWikiで、世界中の何千人もの書き手が書き足しているわ。ひなたの言っている像がその最初の1本、SCP-173ね。報告書には、収容のむずかしさで「オブジェクトクラス」がついていて、Safe、Euclid、Keter……173はEuclidで、きのうのイケアの話に出てきた、終わらない家具屋のSCP-3008は——
みずき:…先輩、その早口を収容して。……で、原作の人たちが聞いてないのに、なんで映画が作れるわけ
ことね:正確には、原作者がひとりいるわけじゃないのよ。SCPの作品は、キャラクターも設定もぜんぶ、クリエイティブ・コモンズの「CC BY-SA 3.0」というライセンスで公開されているの。つまり、作者のクレジットを書けば、書き換えても、お金をとる作品にしてもいい。ただし「SA」——継承という条件があって、そこから作ったものも同じ条件のライセンスで出さないといけないの。財団の声明によると、A24は映画館で上映も配信もできる。でも、コピーを防ぐDRMはかけられないし、配給を独占することもできない。だれでもYouTubeに上げられるし、ほかの配信サービスもお金を払わずに流せる。……だから、興味を持った人はいても、ハリウッドはSCPで映画を作ってこなかった、と書いてあるわ。
ひかり:えっ、じゃあ、映画館で公開したその日に、YouTubeにタダで上がっちゃうかもってこと!?
みずき:…財団がそう書いてる。「公開初日にはYouTubeで見られると思う(もっと早いかも!)」。……なのにDeadlineの記事では、A24がこの企画の全世界の権利を取った、って。コピーしていい映画の、全世界の権利。……で、それ誰得?
ことね:財団は、ケンカを売っているわけではないのよ。声明の終わりには「CC BY-SAを守って映画を作り、配る方法を、いっしょに話し合いたい」とあるわ。……それに、このルールをいちばん重く守ってきたのは、財団自身なの。SCP-173の最初の投稿についていた写真に写っていたのは、日本の美術家、加藤泉さんの彫刻『Untitled 2004』で、無断で使われていたの。2014年に英語版と日本支部が加藤さんと連絡をとって、営利目的でなければと、しぶしぶ認めてもらった。それでも、グッズで勝手に使う人が出たこともあって、ライセンスに合わないその写真を、2022年にWikiから外したのよ。いちばん有名な「顔」を、ね。
みずき:…自分たちの看板の写真まで外して守ったルール。映画にするなら、そこはちゃんと守ってほしい。……書いた人たち、べつに映画化がいやなわけじゃないんだし
ひなた:ふぁ〜……みんなで考えたケーキのレシピで、お店がケーキを作って売るのはいいけれど、そのお店のケーキも、だれでもまねして作って配っていいことになる、ということなのですね。……ひなたは、映画館のポップコーンのほうも、みんなで分けっこしたいのです。
まとめ:怪物を閉じこめるのが財団の仕事。でも物語だけは閉じこめないと、ずっと前に決めてある。A24からの返事は、まだ来ていない。