ハエの脳に、ビットコインのチャートを見せてみた
ショウジョウバエの脳の配線図を使い、チャートの画像を見せて仮想通貨を売り買いさせる実験「Stonkfly」が公開された。作者は、稼げるようになった証拠はまだないと明記している。
ことね:先に結論を言っておくわね。そのハエが取引で稼げるようになった、という証拠は、まだないの。作った本人が、説明のいちばん最初に、そう書いているわ。
ひなた:ふぁっ……ハエさんが、お金のやりとりをするのですか? ……ひなたのおこづかいも、ハエさんに預けたら、ふえるのですか?
みずき:…ふえない。いま結論を聞いたでしょ。……先輩、頭から説明して
ことね:6月に、アメリカのハワード・ヒューズ医学研究所のジャネリア研究所や、Google Researchなどのチームが、オスのキイロショウジョウバエの脳と、わたしたちの脊髄にあたる「腹側神経索」の配線図を公開したの。名前はMaleCNS v1.0。神経細胞の一つひとつと、そのつながりをぜんぶ書き出した地図を「コネクトーム」と呼ぶのよ。今月3日には論文も出て、だれでも使える形で公開されていたから、数日のうちに、その配線をパソコンの中で動かして『DOOM』を遊ばせる人や、『スーパーマリオ64』を操作させる人が出てきたの。……マリオは、ジャンプしながら壁にぶつかり続けていたけれど。
みずき:…で、今度は仮想通貨。作ったのはCoinbaseのエンジニアで、『DOOM』のハエと同じ人。GitHubを見たら、この1週間で、DOOMのハエ、取引するハエ、それからハエの脳とつないだ言語モデルとおしゃべりするやつ、の3つを出してた。……ハエ、働かせすぎ
ことね:しくみはこうよ。16万6700個の神経細胞と、2560万本のつながりを計算するの。値段の数字は渡さない。ビットコインの値動きを320×180の小さなチャート画像にして、ハエの目の細胞3335個に明るさを、811個に色を入れるの。判断は、左右の神経の発火の差を読むだけ。右側がはっきり多くて、もう1種類の神経も発火したら「買い」、左側なら「売り」、それ以外は「何もしない」。……ただしこれは作者が決めた読み取り方で、ハエの脳に「買いの神経」が見つかったわけではないわ。ネットワークが片方に曲がりたがるクセを持つと、ずっと「買い」が続くこともある、それを相場を読んでいると思わないで、と本人が注意しているの。
ひなた:ふぁ〜……ハエさんは、チャートを見て、なにかうれしいことがあるのですか? ……ひなたなら、チャートより、バナナの絵を見せてもらったほうが、がんばれるのです。
ことね:ごほうびは用意されているわ。持っているお金と通貨を合わせた金額が0.01ドル以上ふえたら、ごほうび係のドーパミン細胞15個に、へったら、いやなこと係の2個に、電気の刺激を入れるの。手数料も損に数える。痛みや苦しみを再現したものではない、と作者ははっきり書いているわね。……けさの「ズルをするAIは、ごほうびの出し方から育つ」の話を思い出して。ごほうびの条件は「合計がふえたら」だから、相場ぜんたいが上がっていれば、ただ持っているだけでもごほうびが出るの。作者も、値上がりの波の中では、どんな買い手でも腕がいいように見える、と注意しているわ。
みずき:…注意書き、まだある。最初は黒い背景のチャートにしたら、記憶にかかわる細胞がほとんど反応しなかったから、白い背景に変えたって。……ハエ、ダークモード非対応
ひなた:ふぁ〜……ハエさんは、じぶんがお金を動かしていることも、知らないのです。明るい画面をながめていたら、ときどき、ごほうびの神経をちょんってつつかれるだけなのです。……ひなたも、宿題を1ページやるたびに、ことね先輩におせんべいを1枚もらえたら、ずっとがんばれるのです。
まとめ:上がり相場なら、ハエの脳にもごほうびは届く。それを腕前だと思うかどうかは、見ている人間しだい。