生まれたての太陽は、惑星をひとつ食べたかもしれない
若い太陽が地球5〜10個ぶんの重さの惑星を飲み込んでいたとすれば、太陽の内部と表面をめぐる長年の食い違いをまとめて説明できる、とトルコの天文学者が発表した。
みずき:…お菓子箱のチョコ、朝は12個。いま5個。お昼から部室にいたのは、わたしと、ことね先輩と、もう1人。
ひなた:ふぁっ……ひなたは、ずっと宇宙の本を読んでいたのです。ほっぺについているのは、その……宇宙のかけら、なのです。
ことね:宇宙のかけらにしては、甘い匂いね。……でも、ちょうどいい話があるわ。つまみ食いの跡が、46億年たっても残っているかもしれない、という論文よ。食べたのは太陽。トルコのエーゲ大学のユルドゥズ教授が、生まれたばかりの太陽が、地球の5〜10倍の重さの惑星をひとつ飲み込んだのではないか、と王立天文学会の雑誌に発表したの。
ひなた:ふぁ〜……太陽さんも、つまみ食いをするのですか。地球5こぶんより大きいのを、ひとくちで……。ひなたより、ずっと食いしんぼうなのです。
ことね:そのくらいの惑星を「スーパーアース」と呼ぶの。地球より重くて、海王星よりは軽い惑星ね。よその恒星のまわりではたくさん見つかっているのに、太陽系にはひとつもない。それで10年ほど前に、水星より内側で生まれたスーパーアースが、若い太陽に落ちたのかもしれない、という説が出ていたの。ただ、それは「落ちる道筋はありうる」というところまで。今回は「本当に食べたなら、太陽の中に跡が残っていないか」を確かめにいったのよ。
みずき:…46億年前に食べたものの跡なんて、どうやって見るの。太陽、切って中をのぞくわけにいかないでしょ。
ことね:音で見るのよ。太陽の表面はいつも細かく揺れていて、その揺れ方から、中を伝わる音の速さがわかるの。地震の揺れで地球の中を調べるのと同じで、「日震学」というわ。……実はここに、昔から合わない点があったの。標準的な太陽の計算だと、対流層——熱いガスがぐるぐる混ざっている外側の層ね——のすぐ下の音の速さと、その層の深さが、観測とずれる。表面のリチウムがとても少ないのも悩みの種だった。教授は、若い太陽が重い元素の多い惑星の材料を取り込んだ場合を計算したの。溶けた惑星の成分は対流層の少し下に沈んで、そこだけ重い元素が増える。すると中の構造が観測に近づいて、取り込んだ材料にリチウムが少なければ、表面のリチウムの少なさまで再現できた。いちばん合ったのは、地球およそ5.6個ぶんよ。
みずき:…でもそれ、でかい惑星を1個じゃなくて、小石をちょっとずつ大量に食べても、同じ跡にならない?
ことね:鋭いわね。そこまでは、この発表だけでは言い切れないと思うわ。教授自身も、太陽が惑星を飲み込んだと決定的に証明するのは無理かもしれない、と言っているの。言えるのは、惑星を入れずに混ざり方の設定だけをいじった比べ用のモデルでは、一部しか合わなかった、ということ。次の一歩は、この計算が予想した跡を、別の観測で独立に見つけることよ。……ほっぺのチョコだけで、犯人は決めないの。
ひなた:ふぁ〜……よかったのです。……でも、食べたものがおなかの奥にしずむと、中の音がちょっと変わるのですよね。ひなたも、さっきから、お歌がちょっと低いのです。……あっ。
まとめ:太陽系にスーパーアースがひとつも見当たらない理由は、太陽のおなかの奥に沈んでいるのかもしれない。