850ページは重すぎる。だから本をカッターで切る
ブロガーのマット・カークランドさんが、分厚すぎる本は章の切れ目でカッターを入れ、何冊かに分けて読もうとすすめた。新しい表紙は、事務用のマニラフォルダーで作る。
ことね:(ごとっ)……いたっ。……見なかったことにして。寝ころんで読んでいたら、手がしびれて、顔に落ちてきただけよ。
ひかり:えっ何それ、辞書っ!? ……あっ、ちがう、小説だっ! 『絡新婦の理』……最後のページ、1408って書いてあるよっ!? ちょうどよかったっ、先輩にぴったりのブログ見つけたんだよっ! Hacker Newsで170ポイントっ! 中身はね、「分厚すぎる本は、切っちゃえ」っ!
みずき:…この部室で「本の背を切る」って聞くと、AIの会社の倉庫しか思い出せない。Anthropicとか、Amazonとか。
ことね:……本を、切る。……いいえ、落ち着いて。順番に整理しましょう。作者もそこは先回りしていて、冒頭で「AIのスキャン業者みたいな意味じゃない」とわざわざ断っているわ。きっかけは読書会の課題本。ピュリツァー賞をとった西部劇の小説『ロンサム・ダブ』で、ペーパーバックで850ページを超えるの。寝ころんで持ち上げれば腕が疲れるし、飛行機に持っていけば、かばんの半分がふさがる。だから部や章の切れ目で分けてしまおう、という提案よ。まず、自分で買った本でやること。図書館の本はだめ。ペーパーバックの多くは、ページの背を糊で固めた「無線綴じ」だから、切れ目で本を思いきり反らせると、糊の筋が見えるの。そこにカッターを入れる。製本の糊はきれいに切れて、まわりのページはくっついたままなんですって。糸でかがってあるハードカバーなら、何枚かずつ束ねた「折丁」の境目を探す、と。
ひなた:ふぁ〜……カステラも、ひと棹まるごとは、かじらないのです。切ってから、おいしくいただくのです。ご本も、おんなじなのです。
ことね:……気持ちはわかるけれど、大事なのは切ったあとよ。表紙のない紙の束を持ち歩くと、ページが引っかかって、破れて、はがれてくる。「表紙が何のためにあるか、すぐ思い知る」と書いてあるわ。そこで、アメリカの事務でよく使う、薄茶色の厚紙のマニラフォルダーの出番。束にくるんで折り目をつけて、カッターで大きさをそろえて、背に糊を塗って、ダブルクリップで押さえて乾かすの。糊は工作用のふつうので十分。最後に太い油性ペンで題を書いて、できあがり。家宝を作るわけじゃない、自分が読みやすくするためだから、ですって。
みずき:…作者、自分の書いた本も「分厚すぎる」って認めてて、切ってもらってかまわないって。……で、電子書籍でよくない? コメント欄でも真っ先に言われてた。あと「これが流行ったら、誰かが『最初から分けて売ればいい』と思いつく。連載小説の復活だ」ってのも。
ことね:それ、日本ではとっくに出版社がやっているのよ。この『絡新婦の理』にも、あとから4冊に分けた「分冊文庫版」が出ているの。……文庫って、本来はポケットに入る本のことなのだけれど。つまり、さっきわたしの顔に落ちてきたのは、4冊ぶんの重さだったということね。
ひなた:ふぁ〜……ことね先輩、1408ページのご本を4つに分けたら、「読み終わった!」が4回できるのです。……ひなたは、1回より4回のほうが、うれしいのです。
まとめ:切ったのは、背中の糊だけ。お話は、次の巻でちゃんと待っている。