庭の鳥の声を聞いて、1800年代の図版を並べる額縁
ノルウェーの開発者が作った額縁が、マイクで拾った鳴き声から鳥を判別し、その種の古い博物画を電子ペーパーに並べる。絵は400種類以上・800枚以上を手で切り抜いたもので、AIが描いた絵は使っていない。
みずき:…この1時間、知らない人の庭に来てる鳥を、ずっと見てた。ノルウェーの、ベルゲンってところの。……いま4羽。さっきまで6羽いた。ぜんぶ、鳴き声で分かってる。
ひかり:えっ何それっ!? みずき、ついに人のお庭を見張る係になったのっ!? ……っていうか鳴き声で分かるのっ!? わたし、スズメとハトだって、見なきゃ分かんないよっ!
みずき:…見張ってない。作った人が、そのまま見せてる。カメラは無い。マイクだけ。声を聞いて、どの鳥かを当てて、その鳥の絵を額縁に並べる。……並ぶのは写真じゃなくて、1800年代の図鑑の絵。
ことね:「Fugleramme」ね。ノルウェー語で、そのまま「鳥の額縁」よ。昨日Hacker Newsに出て、1200ポイントを超えているわ。……声を当てているのはBirdNETという判別モデル。コーネル大学の鳥類学研究所と、ドイツのケムニッツ工科大学が作ったもので、それを自分の家で動かせるようにした「BirdNET-Go」に、判定はぜんぶまかせているの。額縁のほうは、その結果を受け取って、絵を選んで、1枚の紙の上に並べて、画面に描く係ね。中身はラズベリーパイ5と、13.3インチの電子ペーパーと、マイクと、A4の額。電子ペーパーは電子書籍リーダーの、あの画面よ。電気をほとんど食わないかわりに、書き換えがとても遅いの。だから、鳥の顔ぶれが変わったときだけ描き直すようにしてあるわ。
ひなた:ふぁ〜……みずき先輩、お声を聞いて、その子の絵を出してくれるのですね。……ひなたのおうちの前でも、毎朝、だれかがずーっと鳴いているのです。あの子の絵も、出してほしいのです。……パンのみみを分けてあげているので、たぶん、ひなたのことは知っているのです。
ひかり:でもでもっ、なんで写真じゃなくて、わざわざ古い絵なのっ? 今のカメラのほうが、ぜったいきれいに撮れるよねっ?
ことね:そこがこの人のいちばん言いたいところみたい。説明書きに「このプロジェクトの半分は、すばらしいパブリックドメインの博物画を見せることにある」と書いてあるのよ。昔の図鑑の図版から切り抜いた絵が800枚以上、400種類以上。正確には、ぜんぶ本物の図版から手で切り出して、一枚ずつ選んだもの。「AIが描いた絵は1枚もない」と、わざわざ断ってもいるわ。……並べ方も凝っていて、大きい鳥ほど真ん中に来るように、実際の体重で大きさを決めているの。紙の質感の背景に、6色まで色を落として描くのよ。どの鳥も来ていないときは、だれもいない止まり木が1本だけ映るわ。
みずき:…で、コメント欄はちょっと荒れた。何か月か前に話題になった「AvianVisitors」っていう、ほぼ同じ仕組みのプロジェクトがあって、「元ネタにひと言も触れてないのはどうなの」って。……作った本人、その場で「もっともだ」って返して、似たプロジェクトを3つ、説明書きに足してた。172件ついたコメントの、わりと上のほうでの出来事。
ことね:そのやりとりのおかげで、いちばん最初の着想も出てきたのよ。部屋の壁に貼ってあった、WWFの鳥のポスター。「あれの、うちの庭バージョンが欲しかった」ですって。……お値段の話もしておくと、13.3インチの電子ペーパーが229.50ポンドで、ここがいちばん高いの。そうしたらコメント欄に、その部品を売っている会社の社長さんまで出てきて、「7.3インチなら79.50ポンドですよ」と教えていたわ。
ひなた:ふぁ〜……鳥さんが1羽も来ない日は、だれもいない止まり木が映るのですね。……ひなたは、それがいちばん好きなのです。「まだ来ていないだけ」って、言っているみたいなのです。
まとめ:額に並ぶのは、100年以上前に描かれた絵。でも、今日その庭に来た鳥だけ。