一文字も書けないAIが出た。代わりに0.1秒で決める

ChatGPTのもとになった研究に関わった元OpenAIの人が、文章を一切書かないAI「Jev」を公開した。決められた選択肢から確率つきで選ぶだけに絞り、応答は0.07〜0.5秒、出力の料金は無料だという。

ひかり:ねえねえっ、新しいAIが出たって聞いて見にいったんだけどっ……そのAI、文章が書けないんだってっ! 一文字もっ! ……AIって、文章を書く人じゃないのっ!? 書けないAIって、もう何なのっ!?

ことね:きのう出たばかりね。TypeSafe AIという会社の「Jev」よ。作ったのはディオゴ・アルメイダさんという人で、もとはOpenAIにいて、AIに人の指示を聞かせるための研究をしていた。それがChatGPTのもとになったと本人が書いているわ。そこから2年、表に出ないで作っていたのがこれ。……正確には「書けない」じゃなくて「書くのをやめた」なの。答えの選択肢をこちらが先に全部決めておいて、AIはその中から選ぶ。しかも一個ずつじゃなくて、聞いた質問ぜんぶを同時に答えるのよ。

みずき:…で、文章の書けないAIに、何をさせるわけ。

ことね:それが、いま世の中のAIがいちばん地味に使われているところなの。このメールは苦情か、問い合わせか。この画面はどっちに進むべきか。この文章は何点か。……人が読むための文章じゃなくて、プログラムが次の一手を決めるための答えね。会社の説明では「賢いif文」。今のAIだと返事が来るまで3秒から329秒かかるところを、0.07秒から0.5秒で返すそうよ。デモとしてDOOMを遊ばせてもいるわ。1秒に10回聞いて、1時間で7ドルくらい。

ひかり:AIがDOOMしてるのっ!? ……1時間7ドルって、ゲーセンよりちょっと高いくらいだよねっ! あっ、でも文章書けないのに、どうやって遊ぶのっ?

みずき:…画面は見てない。ゲームの中身を文字の表にしたやつを渡されて、「進む」「撃つ」「下がる」から選んでるだけ。作った会社も正直に書いてる。「AIじゃない普通のボットのほうが、たぶん強い」って。……勝つためじゃなくて、速さの見せ物。

ひかり:ところでっ、名前の「システム1」って何なのっ? システム2もあるのっ?

ことね:カーネマンの『ファスト&スロー』から取っているのよ。人の頭には、考えずにぱっと出る速い判断=システム1と、腰を据えて考える遅い判断=システム2がある、という話ね。今のAIはずっとシステム2をやらされてきたけれど、実際の仕事の大半はシステム1でしょう、というのがこの会社の言い分だわ。……ついでに言うと「Jev」のほうは経済学者のジェヴォンズから。石炭を使う機械の燃費が良くなったら、石炭の消費はかえって増えた——という有名な話で、「安くなったぶん、みんなもっと使う」という意味を込めているの。

ひなた:ふぁ〜……ひなた、システム1、とくいなのです。からあげを見たとき、食べるかどうかで迷ったこと、一度もないのです。……システム2のほうは、たぶん、いつも寝ているのです。

みずき:…ただ、Hacker Newsは925ポイント、コメント294件で、褒めてるより言い返してるほうが目立った。いちばん刺さってたのが「型を間違えないのと、答えが合ってるのは別」。決めた選択肢からしか選ばないんだから、形はぜったい崩れない。でも中身が堂々と間違ってる可能性は残る。……あと入力は3万2千トークンまで、選択肢は255個まで。社長も出てきて全部に返してた。

ことね:お値段の話もしておくと、入力が100万トークンで0.042ドル。出力は「安すぎて数えられない」ので無料ですって。……けさ、AIを自分のパソコンで動かして元を取るには43.6年、という話をしたでしょう。借りるほうの値段が、また一段下がったのよ。ジェヴォンズの名前をわざわざ付けた会社が、ね。

まとめ:ひとことも書かないAIが返すのは、選択肢と、確信の数字だけ。言い訳はついてこない。

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