本屋が減る日本で、人が集まりはじめたのは図書館だった
日本の本の風景は、書店から図書館へ静かに移りつつある。英語で日本を紹介するニュースレターがそう書いた。熊本県南関町や新潟県弥彦村の小さな図書館を訪ね、よい図書館をつくるのは建物より棚だと言う。
ことね:9993。……みずき、ひなた。これ、なんの数字だと思う?
ひなた:ふぁ〜……ひなたが中学生になってから食べた、おにぎりの数なのです?
ことね:……それだと、1日に10個以上食べていることになるわよ。正解は、日本の本屋さんの数。3月末の集計で、初めて1万店を割ったの。いちばん多かった1998年の、だいたい4割ね。昨年度は102店が開いて、499店が閉じたわ。本屋さんが1軒もない市区町村も、全国の29.3%にあたる510か所。……それでね、今日Hacker Newsで話題になっていたのが、この英語の記事。「日本の本の風景は、書店から図書館へ、静かに移りつつある」。英語に訳されていない日本を海外に紹介する「Untranslated Japan」というニュースレターで、書いたのはAsami Saishoさんよ。
みずき:…本屋が減って、図書館に人が行く。……それ、「本を買わなくなった」を、きれいに言い換えただけじゃないの。
ことね:作者の言いたいことは、少しちがうの。この人、旅先ではまず本屋さんに入るタイプなのよ。その土地の人が何に興味があって、何を心配して、何を好きなのかがわかるから、って。その人がいま夢中なのが、地元の図書館。流れを変えたきっかけとして挙げているのが、2013年に佐賀県の武雄市図書館を、TSUTAYAを運営するCCCが任されたこと。館内にスターバックスと、本を買える書店を入れたの。日経新聞によると、リニューアルから半年の来館者は、前の年の同じ時期の3.6倍。2015年には本の選び方で批判も浴びたけれど、作者は、そこから個性的な図書館が全国に次々とできていった、と書いているわ。そのうえでいちばん大事な点が、「図書館は、書店とちがって公共の場所だ」ということ。何も買わなくていいから、どんな人でも気軽に集まれる。
ひなた:ふぁ〜……何も買わなくても、いていいのですか? 駄菓子屋さんで30分なやんでいたら、おばあちゃんに「どれにするの」って聞かれたのです。
ことね:いていいのよ! それで、作者が先日訪ねたのが熊本県の南関町。人口9000人に届かない町よ。去年の10月、町営の温泉施設だった「うから館」を改修して、図書館を中心にした交流施設「ukara」ができたの。図書館の愛称は〈このみch-i〉。入口でまず出会うのは、町の歴史や、町ゆかりの人たちの本。奥へ進むと熊本県の本、その先に日本の文化の本と、棚が外へ外へと広がっていくの。ふつうの図書館は、探しやすいように決まった分類の順に並べるでしょう? ここは小さな図書館だからこそ「正しさ」を選ばずに、探していなかった本と出会うための並べ方にした、と作者は書いているわ。……そして7月19日、施設の来館者が10万人を超えたの。開館から9か月ちょっとでね。
ひなた:温泉が、図書館になったのですか……! ほかほかの図書館なのです。……あっ、ことね先輩のスマホに、10万人目の人は南関あげや南関そうめんをもらった、って書いてあるのです。ひなた、20万人目をねらうのです。
みずき:…でも「立派なハコを建てたら人が来た」なら、ただのハコモノ。……って思ったら、作者も同じこと書いてた。新潟の弥彦村の「らいわ弥彦」。建物は、ごくふつう。1階にカフェとイベントの場所、上に読書と勉強の部屋。足が止まったのは、本の選び方。ベストセラーでも新しさでもなくて、この村の人が出会うべき本はどれかを、誰かが考えた跡がどの棚にもあった、って。締めは「立派な建物は、買える。すばらしい棚は、育てるしかない」。……あと、こういう場所は検索にもAIのおすすめにも出てこない、とも書いてる。それを、ネットの記事で広めてるんだけど。
ひなた:ふぁ〜……棚を育てるのは、おばあちゃんのぬか床と同じなのです。りっぱなおけを買っても、まいにち誰かがかき混ぜないと、おいしくならないのです。……図書館の人は、まいにち、本をかき混ぜているのですね。
まとめ:本屋は1万店を割った。人口9000人足らずの町では、図書館になった元温泉に、9か月で10万人が来た。