死神と「ダメにする係」が手を組んだ。モノの早死にを、ノルウェーの消費者団体が動画に

ノルウェー消費者評議会が、製品が早く壊れすぎる問題の報告書を出し、修理にかかる税の撤廃や、不良品を申し立てられる期間の延長を提言した。宣伝動画の主役は死神。

ひかり:うわーんっ、ワイヤレスイヤホンの右だけ、急に充電できなくなったっ! 買ってまだ2年と1か月なのにっ! ……さっき見た動画で言ってたの、これだよっ! 犯人、死神だよっ!

みずき:…イヤホンに死神は来ない。……で、何の動画。

ひかり:ノルウェーの消費者評議会っていう、国のお金で動いてる、消費者の味方の団体が出した3分ちょっとの動画っ! 主役は死神のお姉さん。「わたしのまわりでは、何もかもが死ぬ」「さみしい仕事で、新しい出会いがない」って。そこに現れたのが、「エンシッティフィケーター」っていう、ものをダメにするのが仕事の男の人っ! 「死よりダメなものってある? 完璧な相性だった」って、2人で組んじゃうのっ! ……ただし、安全な距離はとるんだって。

ことね:ひかり、その肩書き、あまり大きな声で言わないで。お行儀の悪い英単語が混ざっているの。作家のコリイ・ドクトロウさんが作った言葉がもとで、ネットのサービスがだんだん悪くされていくことを指すのよ。評議会は半年ほど前にも、この係の1日を追う体裁の動画を出していて、YouTubeで450万回以上見られているわ。今回はその続編で、組む相手が死神。一昨日出した報告書『買う。使う。捨てる。くり返す?』の宣伝なの。テーマは、ものが早く死にすぎること。

みずき:…で、すぐ壊れて誰得。……動画の答えは「売る側」。「昔の製品は、ずっと長持ちした。問題は、1回しか儲からないこと」。だから材料の質を落とす。直せないようにする。壊れたら、また買う。また買う。また買う。……長持ちする製品を作ってた会社はいまどこ、って聞いて、答えが「死んだ」。……笑っていいのか迷う。

ことね:報告書のいちばん大事な結論は、「問題は、消費者にやる気がないことではない」なの。いまの市場は、直したり、中古を買ったり、みんなで借りたりするより、新品を買うほうが簡単で安くできている、と。報告書に載っている調査では、10人に9人がもっと環境にやさしく暮らしたいと答えているのに、3人に2人は、部品が手に入らなくて物を捨てるしかなかった経験がある。10人に8人は、修理は面倒すぎるか、頼める先がないと感じていて、直さない理由でいちばん大きいのは値段。ちなみにノルウェーは、1人あたりの物の消費量が、世界でもとくに多い国のひとつなのよ。

ひかり:しかも電子機器って、壊れる前に死んじゃうんだよねっ! 動画でも言ってたっ、「デジタルで殺すのはもっと簡単。更新を止めるだけ」「もっといいのは、寿命を縮める更新を配ること」って!

ことね:笑えないことに、調査でも4人に3人が、ソフトの更新が止まったり、ほかの機器とつながらなくなったりして、電子機器を捨てるしかなかった経験があるの。だから提案は具体的よ。修理と中古品にかかる付加価値税——日本の消費税にあたるもの——をなくすか、大きく下げる。ソフトの更新を受ける権利を強くする。それから、買ったお店に「不良品です」と申し立てられる期間。ノルウェーの法律では、ふつうの製品は2年、ずっと長く使う前提の製品は5年なのだけど、それを3年と6年に延ばそう、と。SNSやインフルエンサーの宣伝を、テレビ放送と同じように中身の2割までにする案も入っているわ。……ちなみにEUでは、7月末から「修理する権利」のルールが各国で始まったの。ノルウェーはEUに入っていないけれど、修理しやすさの基準はそれに合わせて入れて、と求めているのよ。

ひかり:3年……。ノルウェーに住んでて、それが3年になってたら、わたしのイヤホン、まだ申し立てられたのに……っ! 死神さん、あと11か月だけ待ってほしかったよぉ……。

ひなた:ふぁ〜……1回しか売れないから、長持ちはだめ、なのですか。……給食室のおたまは、ひなたが入学するより前から、ずっと同じおたまなのです。まいにち、何百人ぶんのおみそ汁をよそっているのです。……あのおたまを作った会社さん、いまも元気だといいのです。

まとめ:動画いわく、永遠に続くのは死だけ。だから消費者評議会は、せめて「壊れました」と言える期間を1年延ばそう、と言う。

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