卵を抱いたらオムレツになる。巨大恐竜は、草が腐る熱で温めた

首の長い巨大恐竜ティタノサウルス類が、南米の南の端に近い涼しい土地でも巣を作っていた。筑波大学などのチームが卵の殻の化石を調べ、卵を巣材に埋めて、植物が分解されるときの熱で温めていたと推定した。

ひかり:ねえ見て見てっ、体育倉庫からバレーボール借りてきたっ! これね、恐竜の卵とだいたい同じ大きさなんだってっ! で、この卵を産んだお母さん、体重が最大75トンっ!

みずき:…あとで返してきて。……で、75トンが、そのボールの上に座るの。

ことね:座れないの。そこが今回の論文の出発点よ。ティタノサウルス類は、首としっぽが長くて、4本足で歩く、植物食の恐竜の仲間。いちばん大きいものは75トンに届いたと考えられているわ。筑波大学の田中康平准教授たちが、アルゼンチンやカナダの研究者と一緒に、先週「Royal Society Open Science」に発表したの。共著者のカナダ・カルガリー大学のダーラ・ザレニツキーさんは、カナダの放送局CBCにこう話しているわ。「大きすぎるの。上に座ったら、巣はでっかいオムレツ1個になってしまう」。

ひなた:ふぁ〜……バレーボールの卵のオムレツ……。ひなた、大きいフライパンを持っていくのです。……でも、お母さんが座らなかったら、卵さんはだれが温めるのですか? ひなたのおうちの卵は、冷蔵庫に入っているのです。

ことね:それが謎なの。しかも見つかった場所が、アルゼンチンの南の端に近いチョリロ層という地層。時代は白亜紀の終わり、恐竜が絶滅する少し前ね。当時の位置は南緯55〜60度くらいで、ザレニツキーさんによると、気候は今のニューヨークに近かったそうよ。恐竜の卵は、赤道から遠い場所ではめったに見つからないの。北半球ではカナダやシベリアの例があるけれど、南半球で確かに恐竜の卵と言えるものの中では、ここがいちばん南。2020年と2024年に日本とアルゼンチンのチームが一緒に掘って、卵の殻のかけらを250枚以上集めたわ。卵がかえるまでには何か月もかかるから、そのあいだずっと温めておかないといけないのよ。

ひかり:ニューヨークって、冬は雪がふるよねっ!? ……っていうか、かけらだよっ? 殻のかけらだけで、どうやって温め方までわかるのっ!?

ことね:殻の「穴」を見るのよ。卵の殻には、中の赤ちゃんが息をするための、とても小さな穴があいているの。むき出しで置かれた卵なら、穴が多いと乾いてしまうから、少ないほうがいい。土や草に埋まった卵は、空気が届きにくいから、穴が多くないと息ができない。電子顕微鏡で見たら、この殻は穴だらけだった。つまり卵は、巣の材料にすっかり埋まっていたの。……じゃあ、埋まった卵の熱はどこから? 砂浜に卵を埋めるウミガメは太陽の熱を使うけれど、涼しい土地では足りない。論文の答えは、巣の材料の植物が、微生物に分解されるときに出る熱。いまのワニや、ツカツクリの仲間の鳥が、腐りかけの草や葉っぱに卵を埋めるのと同じやり方ね。

みずき:…つまり75トンのお母さんがやってたのは、コンポストづくり。……いい話っぽいけど、穴の数と「寒そうな場所」だけで、そこまで言っていいの。

ことね:いい質問ね。大学の発表も「考えられる」「可能性が高い」と書いていて、言い切ってはいないわ。埋めた卵の温め方の候補は、太陽、地面の熱、植物が腐る熱の3つ。2010年には、同じアルゼンチンの北のラ・リオハ州で、首の長い恐竜の仲間が、地熱で温かい土地に卵を産んでいた跡も報告されているの。今回は涼しい土地だから、残る候補が植物の熱、という筋道ね。それから、台湾の国立自然科学博物館の研究者はCBCに、スペインで見つかった同じ仲間の卵は殻が薄くて穴も少なく、開けた巣だったらしい、と話しているわ。住む場所に合わせて巣の作り方を変えられたことが、世界じゅうに広がれた理由かもしれない、って。

ひなた:ふぁ〜……自分で抱っこできないぶん、草さんと小さな生きものさんに「おねがいね」って任せたのです。大きい子は、ひとりで全部やらないのです。……あっ、ひかり先輩。そのバレーボールは、落ち葉に埋めても、なにも生まれないのです。

まとめ:抱けないなら、埋めて草に温めてもらう。いちばん大きな恐竜の子育ては、ワニのやり方だったらしい。

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