チップを薬品で裸にして顕微鏡で読む。PS2、26年目の陥落
初代PS2の“門番”だったチップ「メカコン」が、カナダの愛好家によって4年がかりで解析された。薬品で殻を溶かし、顕微鏡で回路を読み、最後はソフトの穴から中身を吸い出したという。
みずき:…金庫の中身が見たいから、金庫のほうを薬品で溶かした人がいる。4年かけて。
ひかり:えっ何それこわいっ! 溶かしたら中身まで溶けちゃうじゃんっ! ……ていうか、なんの金庫なのっ!?
ことね:まあ落ち着いて。順番に整理しましょう。溶かしたのは殻のほうよ。……プレイステーション2、2000年に出た初代の、分厚いほうね。あの中に「メカコン」と呼ばれるチップが入っているの。名前のとおり、ディスクを回したり読んだりする機械まわりの仕切り役よ。でも仕事はそれだけじゃなくて、ソニーのコピー防止のかなめでもあったの。メモリーカードを守る仕組みや、暗号のかかった実行ファイルの鍵開けにも関わっている、と有志がまとめたPS2の開発資料には書かれているわ。……つまり、機械の司令塔と、門番の兼任。そこが26年間、外から中身を読めない箱のままだったの。
ひなた:ふぁ〜……お薬でとかして、中を見るのですか。……のど飴みたいなのです。なめていくと、まんなかから違う味が出てくるのです。
ことね:筋は合っているのよ、ひなた。やったのはカナダのレトロ機器好き、DiscoStarslayerさん。まずチップを薬品にかけて殻を溶かし、中の板をむき出しにするの。「デキャップ」と呼ばれる手順ね。そのうえで顕微鏡をのぞいて、回路の模様を目で読み取って、書きこまれている中身を写し取る。写真から読むから「光学ダンプ」。……気の遠くなる話でしょう。しかも、読み取りはきれいには揃わなかったの。本人の言い方で「汚いダンプ」。ところが、その汚い読み取りの中から、Libbyさんという人が穴を見つけたのよ。そこで、ソフトのほうから中身を吸い出す道が開いたの。発表の一文はこう。「4年の努力のすえ、PS2最後の秘密のひとつが、こじ開けられました」。
ひかり:4年っ!? 4年前って、わたしまだ小学生だよっ! 顕微鏡は理科の時間にミジンコ見ただけだよっ!
みずき:…で、それ誰得? 26年前のゲーム機の門番が開いて、誰が喜ぶの。
ことね:記事が挙げているのは、保存と修理とエミュレーターね。PS2のディスクを回す部品は、そろそろ寿命を迎えはじめているの。門番の中身がわかれば、別の部品に差し替える道が開けるわ。パソコンの上でPS2を再現する側にとっても、この門番は長いあいだ壁だったしね。……それと、意外なところにも効くのよ。あのころのゲームセンターの基板、ナムコのシステム246と256、コナミのPython 1は、PS2をいじった機械でね。同じメカコンのソフトが、暗号のかかったゲームを動かす許可を出していたそうよ。
ひなた:ふぁ〜……おばあちゃんちの、ぬか床みたいなのです。毎日かき混ぜてる人がいるから、まだ食べられるのです。……このチップの人も、たぶん、かき混ぜてる人なのです。
みずき:…26年もののぬか床。……言い得てるのが、ちょっと腹立つ。
まとめ:薬品で溶かし、顕微鏡で読むこと4年。26年目に開いた門番の先にあるのは、新作ではなく、ドライブが死んだPS2をもう一度回す道。