「人類史上最大の労働の窃盗」。そう書いたのは、Microsoftの社員だった
ニューヨーク・タイムズなどがMicrosoftとOpenAIを訴える裁判で、黒塗りの外れた書面が公開された。AI学習用のニュース収集を、Microsoftのディレクターが社内で「人類史上最大の労働の窃盗」と書いていたという。
ひかり:クイズですっ! 「人類史上最大の泥棒」——さて、犯人はだれでしょうっ? ヒントはね、つい最近わかった話だよっ!
ひなた:ふぁ〜……給食のプリンを、じゃんけんしないで2個持っていった、たけしくんなのです。……ひなたは、まだ許していないのです。
ことね:たけしくんは置いておいて……。ニューヨーク・タイムズなどの報道機関が、MicrosoftとOpenAIを著作権侵害で訴えている裁判があるの。その書面の黒塗りが外れて、現地の17日に公開されたのよ。報道機関側によると、Microsoftで応用科学のディレクターを務めるブレント・ヘクトさんが、社内の文書にこう書いていたの。AIに学ばせるためにニュースを集めてまわるのは「前代未聞の規模の、驚くべき窃盗」。ひょっとすると「人類史上最大の、労働の窃盗」だ、って。
ひかり:ええっ、訴えられてる会社の人が、自分で「泥棒」って書いてたの!? それ、答案用紙のすみっこに「カンニングしました」って書いちゃうやつだよっ! ……でもAIの会社は、ずっと「問題ない」って言ってるんだよね? なんでっ?
ことね:会社側の言い分は「フェアユース」なの。アメリカの著作権にある例外でね、新しい目的のための使い方で、元の作品の商売を奪わないなら、許可なしでも使っていい場合がある——という考え方よ。ところがヘクトさんは、ニュースを丸ごと集める計画は「フェアユースという考えを完全に茶化すものだ」とまで書いていた。Microsoftの別の文書には「ドゥーム・ループ」——破滅のループという言葉まで出てくるの。自分たちのAIの性能と、ウェブ全体を同時に傷つけるループだ、って。「完成品が、欠かせない仕入れ先の経済的な土台を脅かすのは極めて異例だ。だが、われわれはまさにその状況をつくってしまった」とも書いてあるわ。
ひなた:ふぁ〜……わかったのです。パン屋さんの試食コーナーで、みんながおなかいっぱい食べちゃって、だれもパンを買わなくなるのです。するとパン屋さんがつぶれて……あしたから、試食もなくなるのです。……いちばん困るのは、試食を食べていた人なのです。
ことね:ひなた、それ、ほぼ満点よ。……しかも、その「だれも買わなくなる」の部分に数字があるの。Microsoft自身の記録でも、訴えている報道機関のサイトへのクリック率が、ものによっては8〜9割も落ちていた。OpenAIでChatGPTの責任者を務めるニック・ターリーさんも、答えがその場で出るなら「クリックする理由がない」と書いていて、あるエンジニアは「リンクをどれだけ目立たせても、ユーザーは押さない」ですって。
みずき:…で、極めつけ。報道機関側の書面だと、OpenAIの社員が「タイムズの有料記事の壁をくぐる"ハック"が見つかった」って報告したら、ブロックマン社長の返事が「Ah, nice.」。……「おっ、いいね」じゃないのよ。
ことね:ただ、公平に言っておくわね。Microsoftの広報は、自社のAIはニュースの代わりにはならない正当なフェアユースだと反論していて、ヘクトさんの文書は「一社員の個人的な見方で、法的な分析でも、会社の見解でもない」そうよ。OpenAIはまだコメントなし。報道機関側は、みんなで払えば業界全体が得をするのに、一社ずつならタダで取ったほうが得——という「囚人のジレンマ」だから、裁判所に線を引いてほしい、と言っているの。……この前ここで話した、ソニーとワーナーがAnthropicを訴えた件でも、訴状は「史上最大級の窃盗」と書いていたわね。ただ今回は、その言葉が訴えられた側の社内から出てきたのよ。
みずき:…で、ひかり。うちが毎回、元の記事のリンクを貼ってる理由、これだから。……押すかどうかは、知らないけど。
まとめ:ニュースを食べて育つAIは、ニュースが痩せれば一緒に痩せる。それを最初に書き残していたのは、作った側の社内文書だった。