"変なネコ"を拾ったら、100年ぶりの新種だった
ボリビアの雲霧林にすむ小さな斑点模様のネコが、新種「レオパルドゥス・ティルカヨ」として発表された。まったく新しいネコ科の種は100年以上ぶり。始まりは、道ばたで拾われた1匹の子ネコだった。
みずき:…ひなた。そのスマホの待ち受け、猫? ……にしては、ヒョウ柄の主張が強すぎない?
ひなた:ふぁ〜、ティルカヨちゃんなのです。ボリビアの森にすんでいる、できたてほやほやの新しいネコさんなのです。……100年ぶりの、新作なのです。
ことね:新作、はちょっと違うけど……でも本当にすごい話なのよ。現地の17日、学術誌の「カレント・バイオロジー」に論文が出たの。学名は「レオパルドゥス・ティルカヨ」。南米ボリビアの「ユンガス」——アンデス山脈の東の斜面に広がる、雲がかかりやすい森にすむ、小さな斑点模様のネコよ。頭から胴までが42〜50センチほどで、イエネコより小ぶり。まったく新しいネコ科の種が記載されるのは、100年以上ぶりなの。昔の候補を認め直したのでも、亜種を格上げしたのでもない。だれも別物だと思っていなかった完全な新顔、というのがポイントね。
みずき:…100年ぶり、ね。どうせ山奥のカメラに一瞬写った、とかでしょ。
ことね:それが、始まりは道ばたなの。2017年、森の近くの道で子ネコを拾った男性が、家ネコの一種だと思って連れて帰ったのよ。1年ほど一緒に暮らして、さすがに野生の子だと気づいて保護施設へ。そこで出会ったのが、ボリビアで野生ネコを研究しているパオラ・ノガレス=アスカルンスさん。「写真を100枚は撮った」くらい夢中になったけど、最初は南米に広くいる「タイガーキャット」だと思ったの。2019年、となりのブラジルの図鑑の写真と見比べて、ヒョウ柄の輪っかがずっと大きいことに気づいて、「これ、ぜんぜん違う」って。
ひなた:ふぁ〜……1年も、おうちのネコさんだと思われていたのです。……ティルカヨちゃん、きっと毎日、「このカリカリじゃないのです」って思っていたのです。
ことね:ふふ、フンからは小さなネズミの仲間の痕跡が見つかっているから、案外そうかもね。……で、ここからが本番。そもそも元の「タイガーキャット」は、1775年、フランス領ギアナで見られた1匹の"絵"だけをもとに名前がついた種なの。それで中南米のあちこちにいる1種だと思われてきた。研究チームは、博物館の標本も含めて38匹ぶんのゲノム——全遺伝情報を読み比べたのよ。すると、ティルカヨがほかと分かれたのは約140万年前。ライオンと、絶滅したホラアナライオンくらい離れていたの。タイガーキャットは、ひとつじゃなくて5種だった、ということね。
みずき:…で、名札が1枚増えて、何が変わるわけ。……いや別に、かわいいから気になってるとかじゃないけど。
ことね:守り方が変わるの。ブラジル南部からコスタリカまで"1種"だと思えば、数は多く見えて、絶滅の心配はなさそうに見える。でも5種なら、1種ずつ数え直しよ。しかもゲノムからは、ティルカヨを含むいくつかの系統で、長い時間をかけて数が6割以上減ってきたことも読み取れたの。いま野生に何匹いるかは、まだだれにも分からないわ。
ひなた:ふぁ〜……でも、村の人たちは、おじいちゃんの代からこの子を「ティルカヨ」って呼んでいたのです。学名も、その呼び名なのです。……ネコさんは、ずっとそこにいたのです。100年かかったのは、学者さんが気づくまで、なのです。
まとめ:道ばたで拾われ、家ネコとして1年。その子ネコが、ネコの家系図に100年ぶりの新しい枝を足した。