aかanかは、目じゃなく耳。例外は3万語中129語
英語のaとanは、つづりの母音字ではなく発音の母音で決まる。ゲーム作りの解説で知られるAmit Patelが3万2455語を数えたところ、手で直す例外は129語だけだった。
ひかり:ことね先輩、助けてっ! 英語のプリントに「a」か「an」かを入れるやつが20個もあるのっ! 次が母音ならanでしょっ? ……なのに答えが「a unicorn」なのっ! uって母音じゃないのーっ!?
ことね:まあ落ち着いて。……uは母音の「字」よ。でも、決めているのは字じゃないの。音のほう。unicornを声に出してみて。「ユ」でしょう。あのユは、ヤ行の仲間——子音の音なの。だからaがつくわ。逆にhourは、字はhで始まるけれど、声にすると「アワー」。アで始まるからan。……つまり英語のaとanは、目ではなくて耳で決まるのよ。
ひかり:えーっ! じゃあ知らない単語が出てきたら、読み方がわかるまで、aかanかも決められないってことっ!?
ことね:そのとおり。そして、まさにそれで困った人がいるの。Red Blob Gamesという名前で、ゲーム作りの仕組みを動く図で解説していることで有名な、Amit Patelさん。……ゲームって、文章をその場で組み立てるでしょう。「あなたは◯◯を拾った」の◯◯が、遊ぶ瞬間まで決まらないの。だから、単語を渡したらaかanかを返してくれる部品がほしくなる。最初の字が母音かどうかで済むと思ったら、an unicornが出てきてしまった。それで丸一日かけて、辞書を数えにいったのよ。
みずき:…で、例外は何語あったの。
ことね:数え方から話すとね。まず元のリストから、固有名詞3133語、1文字だけのもの26、読み方が2通り以上あるもの9114、記号や短縮形8574、頭文字だけの略語10、手で外したもの2、そして「その他」でひとまとめにされた8万1852語を落としていくの。残ったのが3万2455語。……そのうち、字だけで判断すると間違える単語——つまり例外は、129語。0.4%もないのよ。しかも、きれいにまとまっていてね。uで始まって「ユ」と読むもの、それにeu-、ew-で始まるもの。unicorn、unique、union、universe、ukulele、eucalyptus、eureka、ewe。ぜんぶ音が「ユ」だから、aのほうね。逆に、hが声に出ないもの——heir、heirloom、homage、honest、honor、hour。こちらがan。あとはoneとonce。「ワン」だからaね。作者も最後は、こういう頭の並びを手で書き並べて片づけているわ。
ひなた:ふぁ〜……ひなた、わかった気がするのです。an apple、an ice cream、an onion……でも、a banana。……音で決めるなら、口に入れる前にいちど言ってみればいいのです。
ことね:いい覚え方ね、ひなた。……ただ、同じ単語なのに答えが割れるものもあるのよ。herb——料理に使う、あのハーブ。イギリスでは「ハーブ」と読むからa herb。アメリカではhを読まずに「アーブ」だから、an herb。読み方が2通りあるものを9114語も外したのは、こういう単語がまざるからなの。
ひなた:ふぁ〜……じゃあ、同じ紙に書いてあっても、読む人によって正解が変わるのですね。……ひなた、それで赤ペンを入れられたら、ちょっと納得いかないのです。
みずき:…で、その丸一日かけた調べもの。本人が最後に、わざわざこう書き足してる。「このコードにAIは使っていない。でも、いま思えば使うべきだった。一度きりの使い捨てなんだから、きれいである必要はない。正しければいい。発音の辞書を読む部分と図を描く部分を任せていれば、そのぶん、もっとましなアルゴリズムを考える時間に回せた」。
まとめ:3万2455語を丸一日かけて数えて、例外は129語。本人いわく、その一日はAIに任せて中身を詰めるべきだった。